表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/23

2

「王都に、親父さんの遺品整理?20年も会ってないのに、孝行者だなぁ。いいよ、ちょうど明後日から王都に仕入れに行く予定だったから、一緒に行こう」


翌日、ジェナに一緒に王都に行ってほしいと言うと、あっさり快諾された。

タイミングよく王都に行く予定だったようだ。

ジェナは村で作られた色んなもの(藁で編んだ籠や毛織物、工芸品など、本当にいろんなものだ)をまとめて王都に売りに行っている。みんながそれぞれ王都に行くとお金がかかりすぎるから、ジェナに預けて売ってもらうのだ。ジェナはその手数料で王都でいろんな物を買い、村で売る。商売上手で、良い物を安く買ってくると評判だった。


「クーも、昔は王都に住んでたんだろ?」

「う…ん、そうらしいんだけど。正直よく覚えてなくて…」


クーは俺の愛称だ。

本当の名前は呼びにくくて、母ですら呼ばない。なんでそんな名前をつけたのか不思議に思っていたけれど…今考えると、父が名付けたのかもしれない、と思う。

クツィル、という由来もよくわからない名前だ。


俺は村に来る前のことは、よく覚えていない。

父は一度もこの村に来ることはなかったし、母もあまり父の話をしなかった。王都にいたころに、もしかしたら名前のことを父と話したのかもしれなかった。


「王都にはどれくらいいる予定なんだ?」

「う~ん…遺品整理って、どれくらいかかるんだろう…」

「何がどれくらいあるんだろうなぁ…。でも、しばらくかかるかも知れない。行きは良いけど、帰りはひとりで帰らなきゃいけないかもな。俺も1週間くらいは、王都にいる予定だけど…」


遺品整理なんて初めてで、まったくわからない。

母は形見を貰ったら、あとは誰かに譲るか、売るかしてくればいいと言っていた。どれくらいかかるのかは、父の研究室という部屋がどれくらいの広さかにもよるだろう。きちんと掃除もしなければならない。


「なぁ、ジェナは物を売ったり買ったりするだろ?俺は物の価値がわからないから、ちょっと手伝ってほしいんだ」

「あぁ、そうだな。お前は店もわからないだろうし」

「うん、そうなんだ。それで…これ……」


俺はおずおずと、ジェナに封筒を差し出した。

王都からの手紙に同封されていた金の半分だ。結果的にジェナはついでにはなるけど、道中に面倒を見てもらうことになるし…相場がわからないけれど、心ばかりのお礼のつもりだった。


「ん?なんの金だ?」

「だから…王都までついてきてもらう、料金っていうか…」

「え?ばか、なに水臭いこと言ってるんだよ。ついでだから気にするなって!」

「でも、遺品整理も手伝ってほしいし、俺はこの村から出たこともないからいろいろ面倒かけると思うし…」

「お前の面倒見るのなんて、当たり前だろ!お前はおれの大事な弟なんだから」


大事な弟。

ジェナはよくそう言ってくれる。末っ子のジェナは、ずっと弟がほしかったと言っていつも俺の世話を焼いてくれた。兄妹のいない俺はそれが本当に嬉しかったのだ。


「でも…」

「いいって。そうだ、じゃぁ王都で飯でもおごってもらおうかな。良い店を教えてやるよ」


朗らかな顔は、子供の頃からずっと変わらない。

村を離れることに不安を感じていたけれど、俺はジェナの笑顔を見てようやく安心することができた。

俺はうん、と頷いて、持って来た金をひっこめた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ