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「王都に、親父さんの遺品整理?20年も会ってないのに、孝行者だなぁ。いいよ、ちょうど明後日から王都に仕入れに行く予定だったから、一緒に行こう」
翌日、ジェナに一緒に王都に行ってほしいと言うと、あっさり快諾された。
タイミングよく王都に行く予定だったようだ。
ジェナは村で作られた色んなもの(藁で編んだ籠や毛織物、工芸品など、本当にいろんなものだ)をまとめて王都に売りに行っている。みんながそれぞれ王都に行くとお金がかかりすぎるから、ジェナに預けて売ってもらうのだ。ジェナはその手数料で王都でいろんな物を買い、村で売る。商売上手で、良い物を安く買ってくると評判だった。
「クーも、昔は王都に住んでたんだろ?」
「う…ん、そうらしいんだけど。正直よく覚えてなくて…」
クーは俺の愛称だ。
本当の名前は呼びにくくて、母ですら呼ばない。なんでそんな名前をつけたのか不思議に思っていたけれど…今考えると、父が名付けたのかもしれない、と思う。
クツィル、という由来もよくわからない名前だ。
俺は村に来る前のことは、よく覚えていない。
父は一度もこの村に来ることはなかったし、母もあまり父の話をしなかった。王都にいたころに、もしかしたら名前のことを父と話したのかもしれなかった。
「王都にはどれくらいいる予定なんだ?」
「う~ん…遺品整理って、どれくらいかかるんだろう…」
「何がどれくらいあるんだろうなぁ…。でも、しばらくかかるかも知れない。行きは良いけど、帰りはひとりで帰らなきゃいけないかもな。俺も1週間くらいは、王都にいる予定だけど…」
遺品整理なんて初めてで、まったくわからない。
母は形見を貰ったら、あとは誰かに譲るか、売るかしてくればいいと言っていた。どれくらいかかるのかは、父の研究室という部屋がどれくらいの広さかにもよるだろう。きちんと掃除もしなければならない。
「なぁ、ジェナは物を売ったり買ったりするだろ?俺は物の価値がわからないから、ちょっと手伝ってほしいんだ」
「あぁ、そうだな。お前は店もわからないだろうし」
「うん、そうなんだ。それで…これ……」
俺はおずおずと、ジェナに封筒を差し出した。
王都からの手紙に同封されていた金の半分だ。結果的にジェナはついでにはなるけど、道中に面倒を見てもらうことになるし…相場がわからないけれど、心ばかりのお礼のつもりだった。
「ん?なんの金だ?」
「だから…王都までついてきてもらう、料金っていうか…」
「え?ばか、なに水臭いこと言ってるんだよ。ついでだから気にするなって!」
「でも、遺品整理も手伝ってほしいし、俺はこの村から出たこともないからいろいろ面倒かけると思うし…」
「お前の面倒見るのなんて、当たり前だろ!お前はおれの大事な弟なんだから」
大事な弟。
ジェナはよくそう言ってくれる。末っ子のジェナは、ずっと弟がほしかったと言っていつも俺の世話を焼いてくれた。兄妹のいない俺はそれが本当に嬉しかったのだ。
「でも…」
「いいって。そうだ、じゃぁ王都で飯でもおごってもらおうかな。良い店を教えてやるよ」
朗らかな顔は、子供の頃からずっと変わらない。
村を離れることに不安を感じていたけれど、俺はジェナの笑顔を見てようやく安心することができた。
俺はうん、と頷いて、持って来た金をひっこめた。




