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5話 司祭が危ない

「ヒール……ふぅ〜」


 昨日に続き、今日も冒険者ギルドで冒険者達に治療を施すクリスは、小休憩を挟む。

 冒険者ギルドから渡された一室の外側では、今も何名かの冒険が並んでおり、その混み具合からいかにクリスの治療が人気かを物語っている。


「司祭様、今日もギルドにお越しくださりありがとうございます」

「いえいえ、こちらこそ私の事情に巻き込んでしまい、申し訳ありません」

「そんな!我がギルドは司祭様に大変お世話になっているんです。そんな司祭様を狙う輩はギルド側も容認できません!!」

「ありがとうございます」


 早朝にクリスは、冒険者ギルドに向かい自分が狙われていることを説明したのだが、そこで冒険者ギルドの長であるマスターがクリスを狙う者達からクリスを守るために、部屋の一室だけではなく高ランクの冒険者も護衛としてつかせていたりする。

 エリシアからも精鋭の護衛を付けられ、今のクリスには数多くの護衛が存在する。

 今も、クリスと一緒にいる受付嬢は凄腕の実力者であり、昔は高ランク冒険者として名を馳せた程だ。

 そんな受付嬢をクリスに付かせた理由も、それほどクリスを重要視しているのと、彼女自身が昔クリスに大怪我を治してもらったこがありその恩を返したく、立候補したためだ。


「それにしてもテレーサ国は何を考えているんでしょうか?戦争で大敗した直後に、司祭様を殺そうとするなんて。下手をすればもう一度戦争が起きてしまいますよ」

「確かに不思議ですね。私を殺したとしてもこの国は強国ですし、また負ける可能性の方が高いはず」


 クリスの戦場での活躍は確かに凄まじいが、クリス1人がいなくなってもヴァーミリオン王国は大国である以上、軍隊、冒険者、傭兵、暗殺者、武芸者などの数多くの強者が存在する。

 前回の戦争でも、クリスがいなかったとしてもヴァーミリオン王国が勝っていた可能性が圧倒的に高い。

 故に、前回の戦争で負けてまたすぐに戦争を引き起こすきっかけを作っているテレーサ国の考えが分からずにいた。


「ですがこれ以上私達が考えても仕方ありません。幸い今は姫様が調査に当たってくれていますから報告を待ちます。今は、私に出来ることを精一杯するだけです」

「司祭様……、そうですね。それでは私も、司祭様のお役にたてられる様に微力ながら力になります」

「はい、お願いします」


 そうして、小休憩を終われせたクリスは再び治療を始めようとした瞬間───



───ドガァァァンッ!!!!!


 轟音と共に部屋の扉が砕け散り、砕け散った破片が凶器となってクリスに襲いかかる。


「危ない!!」

「ッッッ!??」


 元高ランクの冒険者の成せる運動能力か、受付嬢はクリスに覆い被さることで扉の破片からクリスを守り抜く。

 しかし咄嗟の出来事だったためか、あるいはクリスを守ることだけに集中していたのか、受付嬢は自身の身を守る事が出来ずに、その背中に凶器の様に飛んできた無数の破片が突き刺さる。


「ッ…!ッ…!!〜〜ッゥ」

「ッ!!大丈夫ですか!?」

「〜ッは、い、大丈夫です」

「見せてください」


 襲い掛かる衝撃に目を回していたクリスは、受付嬢の呻き声を耳にした瞬間、意識を戻し直ぐに受付嬢の傷を確認して治療をする。

 傷は深くなく治療は問題なく終えたが、その間クリスもそして受付嬢も無防備な状態をさらしてしまう。


「グフッ…!!?」


 部屋の中が扉の破壊で起きた粉末状とほこりで霧の形をなしてしまい、迫りよる謎の大きな影に気づかなかったのだ。

 そして、影の存在に気付かなかったクリスは、体に大きな衝撃が炸裂した。

 巨石、まるで自分の体を遥かに超える巨石が猛スピードで撃ち込まれるほどの衝撃。

 無防備な状態で受けたためか、受け身も理解もできずにクリスは壁にたたきつけられが、一枚の壁では足りなかったのか、隣の部屋まで壁は貫通していき2枚目の壁にクリスがめり込む形で止まる。

 ただ、それ程の衝撃と威力にクリスの体が無事なはずはなく右腕は折れ曲がり、臓器には折れた骨が何本も突き刺さっているだけだけではなく体の外にも皮膚を突き破り露出していた。

 体の内から外にかけて、重症のクリスはしかしまだか細くだが呼吸をしているが、それも長くは続かずに血という血が体中からあふれている姿は、出血多量で死を迎えるだろうと誰の目から見ても明らかだった。


「司祭様!!!」


 悲痛な叫びでもって立ち上がった受付嬢は、親の仇でも見るかのような視線で見えない影をにらみつける。

 扉の破壊で生じた粉末とほこりは落ち着き始め、見えなかった影の襲撃者の全貌が明らかになる。


 2メートルを超える巨漢、浅黒い肌に、短く切り揃えられた白髪の髪、緑と赤色を混ぜた軍服らしき服装と帽子、服の上からでもはち切れるほどに膨らでいる大胸筋は男の筋肉の厚さを示しているようで、身長の高さだけでなく体全体の大きさを象徴しているように見えた。

 そんな男の背には男と同等以上に見えるデカく太い大剣を背負っている。

 受付嬢は姿を現した巨漢の男を視界に捉え凍り付く。


「アルス・ゴンド……ッ!」


 凍り付く受付嬢が震えそうになる唇をかみしめるように男の名を言う。


「ほう、一介の受付嬢如きが俺の名を知っているのか」

「なっ、なぜ、貴方がここにいる!?」


 アルスは、その問いに答えるように首を吹っ飛ばされたクリスに向けて振る。


「俺の目的はあそこに埋まっている死にかけの小僧だ。楽に殺してやるつもりだったが存外タフだな。だがあれでは、もう時期死ぬだろう」

「ッッ!!司祭様は殺させません」

「現実を直視できないのか娘。あの司祭はもう助からない」

「黙れ!!」


 叫び声と同時に駆け出す受付嬢は、懐に閉まっていたナイフを片手にアルスの元まで近づき、ナイフを相手の胸元に差し込む───────────筈だった。


 グッ


「えっ……?」


 最初に感じたのは違和感。

 ナイフでの刺した感触が現れずに困惑してしまうが、ナイフの先に目をやることで理解する。

 


 自分のナイフが、相手の肌どころか軍服にすら切り裂けていない事実に。



「いい踏み込みだ。急所も見事に狙えている、ただの受付嬢ではないらしい。が、それだけだ」

「くっ」


 パックステップを踏み後ろに下がる女をアルスは追わずに、冷徹な眼光でもって見つめるだけ。

 もはや、先程の一撃で女と自身の力量の違いは分かったため、相手をする必要もなくなったのだ。


「娘、貴様に用はない。引くなら追わないが、邪魔をするようなら容赦はしない」


 殺意でもって相手を威圧するアルスを前に、受付嬢は恐怖を抱きながらもアルスを鋭く睨みつけるが、そんな抵抗が許されないとばかりにさらなる圧を飛ばされ、膝が思わず床につくことになる。

 心ではどんなに抵抗しても体は正直なもので、恐怖に震え立つことすらできなくなっていたのだ。


「フン」


 もう興味がないのか、または最初から相手にすらしてなかったのか、アルスは受付嬢を見向きもせずその場を立ち去ろうとする。


「まっ、、、待ちなさい!」


 受付嬢は、震える体を押さえつけながらアルスを呼び止めようとするが、そんなことでアルスが止まるはずもない。


「こんなことをして、無事に帰れると思っているのですか」


 守る司祭様を守れず、相手に傷も与えられずに取り逃がしてしまう自分の弱さにどうしようもない怒りが込み上げてくるが、今は目の前の敵を逃がさないために少しでも時間を稼ぎ、この事態に気付いて向かって来てるであろうクリスの護衛達が来るまで自分が────────────。


「応援を期待しているなら諦めろ。ここに来るまでに護衛らしき者達は全員片づけた」


────────だが男にそんな狙いすら読まれ、潰されていたとは知らずに。


「っ」


 考えてみれば分かるもので、そもそもこの部屋にアルスが入ってきた時点で外で待機していた護衛の者は倒されていて、騒ぎを聞きつけて冒険者達が来ないのも恐らく冒険者ギルドにいる全員はもう。


 ドサリ


 その事実を理解した瞬間、体の支えが失ってしまったのか受付嬢は床に吸い付けられるかのように倒れ伏す。


「安心しろ、無駄な殺しはしない。標的(小僧)は死ん「でませんよ」何…?」


 今まで冷徹だったアルスの眼光が初めて驚きと驚愕に染められる。


「……どういうことだ」


 何故まだ生きてる、と驚くのも無理はなく声がした方向を見れば、そこには司祭最初から傷などなかったのか、ボロボロになった服以外は無傷の司祭が立っていた。

受付嬢、受付嬢って名前つけた方がいいんですかね?(でもこの先出るかもわかんないですし)小声

プラスで見た目の説明もいれたほうが………まぁなるようになれですね!!


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