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3話 司祭は狙われる 

「ヒール、ヒール、ヒール、ハイヒール、ヒール、ヒール、ヒール、ヒール、ヒール、ハイヒール、ヒール、ハイヒール、ヒール、ヒール、ヒール、エリアヒール、ヒール、ヒール、ハイヒール、ヒール、ヒール、エリアヒール、、ヒール、ヒール、ハイヒール、ヒール、ヒール、ヒール、ヒール、ヒール……」


 今日1日でどれくらいの回復魔法を掛けただろうか。

 戦争の時よりは治療する回数が少ないとはいえ、流石ヴァーミリオン王国の冒険者ギルドと言ったところだろうか。

 治療しても新たな冒険者が現れ、ちょっとした休憩を挟む間も無く治療し続ける。

 10ゴールドと安い値段の治療という事もあるが、この冒険者ギルドを多用している者は皆知っている。

 クリス司祭が使う回復魔法の腕を。


「ありがとうございます。司祭様」

「これでまた依頼を受けらます」

「相変わらずの腕ねクリス」

「金は払うんだ、礼は言わねぇぞ。…また来る」

「もう、ダメかと思いました。…本当にありがとうございます」

「あの本当にここまでしていだたいてこのお値段でよろしいのでしょうか?」


 数々の冒険者がクリスに感謝と礼を重ねる。

 中には、横暴な冒険者もいるだろうが、クリスは微笑みを絶やさず治療を続けていく。

 その顔に一切の疲労を見せずに。


「あの〜司祭様、そろそろお休みしてはいかがでしょうか?」

「心配ありがとうございます。ですが大丈夫ですよ。まだまだ治療が必要な方が多くいますから」


 はっきりと言ってクリスの治療回数は異常である。

 もう100を超える回復魔法を休み無く使用している。

 その魔法の中には高位の魔法も存在していて、疲労の前に魔力が尽きる筈だ。

 実際これを他の司祭や回復師に頼んでみろ。

 直ぐに限界がきて倒れてしまうだろう。


「司祭様は本当に凄いお方なんですね」

「戦争で鍛えられましたから。あそこでは弱音は吐けませんからね」

「戦争、ですか…」


 ヴァーミリオン王国に限らずこの世界は争いが絶えない。

 戦争が起きる理由としては、領土、人、食糧、因縁、恨み、異種族間など多岐に渡る。

 前回の戦争もちょっとした領土関係でのいざこざで起きた戦争であり、ヴァーミリオン王国と隣国での争いだった。

 

「司祭様はなぜ前回の戦争に参加されたのですか?」

「可能な限り犠牲者を減らしたかったからですよ」

「流石は司祭様です!」


 建前である。

 クリスが戦争に参加したのは金の為である。

 司祭が戦争に参加すれば、その者が所属する教会に寄付金が贈られる為である。

 そしてその寄付金の一部がクリスの給金として渡される。

 また活躍の度合いによってその贈られる金額変わる為、クリスは頑張っていたのである。

 

「それに聞きましたよ!今回司祭様は褒賞を自分の為ではなく犠牲になった者達の為に使ったと」

「民の幸せが私の幸せです。戦争は止められませんが、せめて私のできる範囲で民達を癒したかったのです」

「…司祭様」


 嘘である。

 個人的に褒賞を貰ってしまっては色々と面倒事が起きてしまう為、泣く泣く諦めただけである。

 司祭という立場でなければ、金などを褒美に貰っていた筈である。

 ある意味この者は、司祭でよかったまである。


「でもよく司祭様は色々な戦争に参加できますね。他の司祭の方達は逃げ出してしまうのに。怖くないんですか?」

「怖くないわけではありませんが、私は信じているんですよ味方の勝利を」


 本当である。

 クリスが参加する戦争では、味方がとても強くハッキリと言って勝ち戦なのである。

 ピンチの時が全く無かったわけではないが、何だかんだとしぶとく生きている。

 数々の戦争はクリスの回復魔法と魔力を極めに極め続け、多くの戦争で活躍するに至った。

 

 それからもクリスの治療は続いてき辺り一帯が暗くなり始める。

 

「それでは、私はそろそろ帰りますね」

「お疲れ様でした司祭様」


 これ以上遅くなるとマリベルが心配すると思い冒険者ギルドを後にした。

 

♢♢♢♢


 帰りの街中を歩きながらクリスは、今回の稼ぎを振り返る。


「稼ぎは全部で5300ゴールドか……」


 少ない。

 530人を治療してこの金額は少ない。

 

(そもそも頭おかしいだろ。1人10ゴールドって!せめて100ゴールドだったら…いやそれでも少ないな)


 回復師や司祭が治療するにあたって軽傷であろうと最低で数千から数万ゴールド以上を請求する。

 それを考えるとクリスが如何に献身なのかを理解出来よう。

 内心は置いといて。


「今更値段を変える訳にもいかないしな〜」


 お世話になった婆さんの教えの1つである『清く正しくある事』、これがクリスを蝕む。

 この男、自分を育てた婆さんにはとことん弱いのである。


「仕方ない。この金で美味いもの買ってマリベルと一緒に食べよう」


 お金の使い道を決め街の市場に足を進めようとしたクリスだったが、進行先を3人の男に閉ざされる。


「お前が、司祭のクリスだな」

「…確かに私の名前はクリスですが」

「付いてきてもらうぞ。抵抗はするなよ」

「…分かりました」


 フードを深く被り顔が見えない男達は、クリスを囲む様にして道外れの人気が無い所に連れて行く。


「あの、貴方達は一体…?」

「悪いが、司祭様よアンタには死んでもらう」


 男の1人がナイフを突き立てる。

 

「何故、と言っても答えてくれなそうですね」

「ああ、アンタに恨みは無いが金の為だ」

「依頼主がいるって事ですね」

「…殺せ」


 男の声と共にクリスの喉元めがけナイフが振るわれる。

 だが、そのナイフがクリスに触れる事はなかった。


「悪いがクリス司祭は我が国の宝だ。死なせるわけにはいかない」

「ッ、ギャァーー!!」

 

 叫び声共にクリスを襲ったナイフが地に落ちる。

 ()()と一緒に。

 ナイフを持っていた男は蹲り無くなってしまった己の腕を抑える。



「何者だ!?」

「お前よくも!」


 狼狽える男とは別に、もう1人が謎の人物に襲いかかる。

 咄嗟だった為かはたまた元から持っていなかったのか、拳で襲いかかる男を見もせずに体を逸らし拳を躱し、入れ違い様に謎の人物は男の腹部に拳を叩き付けた。


 ボキィ


 骨の折れる音共に。


「ふむ、歯応えがないな」

「お、お前は…!!」


 街道から外れた場所の影響で暗く謎の人物の姿が上手く見えなかったが、丁度その場に月明かりが差した事でその人物の姿があらわになる。


「エリシア、ヴァーミリオン…ッ!」


 月明かりから覗くその者の美貌を引き立て、また戦場で見えた血が混ざった紅い髪色では無くその美貌を損なう事のない綺麗な赤髪、この国の姫君であるエリシア本人だった。


「姫様」

「部下の前ではともかく今はいないのだ。いつもの様にエリーと呼んでくれないのか?」

「呼んだ事はありませんよ…エリシア様」

「連れないなぁ、まぁ姫様よりはいいだろう」


 クスリと笑うエリシアは妖艶であり大変魅力的だ。

 ただし片腕から血が溢れている者とお腹を抑えながら嘔吐を撒き散らす者が目の前に居なければ、だが。

 

「さて、話は後にして…おいお前」

「ヒッ!」


 謎の人物がエリシアと理解し怯え含んだ顔で最後の男は震えながら座り込む。

 「戦血姫」の名はそれほどまで恐ろしいのだ。


「何故クリス司祭を襲った?」

「あ。あのっ…これ、は」

「早くしろ」

「ぎっっつっ!」


 そう言いエリシアは、座り込む男の指を踏み潰す。

 相当強く踏み込んだのか男の指は折れ曲がり、骨が皮膚を突き破り血が滴る。


「ほら早く答えろ。でなければ他の指も潰す」

「ッ…そっ、それが分からないのです!」

「ほう〜分からないと。どうやら全て潰して欲しい様だな?」

「ほっっ本当なんです!!俺達は仮面の付けた男からその司祭を殺すように言われただけなんです」

「仮面の男?」

「はははいぃ!前払いで100万ゴールド死体を見せれば、500万ゴールド渡すと言われ…」

「…それだけか?」

「は、はいそれだぎゃっっぁぁああああっっ!!」


 男の返事を最後まで聞かずエリシアは男の手を踏み潰した。

 男はあまりの苦痛にのたうちまわり苦しむ。

 それを見ていたクリスは、引き攣りそうな顔をどうにか抑えこむながら尋ねる。

 

「…指は潰さないのでは?」

「指ではない、手だ。それに答えれば潰さないとは言ってない」

「………そうですか」


 ドン引きである。



これから使う設定かは分かりませんが一応、この世界のお金の単位は日本でいうと


・1ゴールド 約10円


10倍ずつ単位が変わると思って貰えば大丈夫です。

つまり約100円でどんな傷でも治して貰えるとなると…割に合わないですよねww

キレても大丈夫ですよクリス君。


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