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007 異世界の少年(後編)

「ちょっと待って下さいよ! 何でですか?!」

「おっ、大分くだけて話せるようになってきたな。良い事だ」

「そういう事ではなくてですね!」

「すまんすまん。順を追って説明しよう」


何であんな問題児を抱えないといけないのか。

国が管理して適正に運用すれば良いじゃないか。


「まぁ、そんなに難しい話では無いのだがな。簡単に言えば本人の意向だ」

「本人の? そこには誘導は入ってませんか?」

「誘導も洗脳もしてないぞ。彼は冒険者になりたいと最初から言っていた」

「冒険者? そういえば言ってたような……。しかしそれはどんな職業?ですか?」

「彼が言うにはダンジョンに潜り魔物を倒して収入を得る職業らしい。若者の誰もが希望する憧れの職業だそうだ。ほら聖騎士団そのものじゃないか」

「そう聞けばそれっぽいですけど……。でも若者が憧れて希望するような職業じゃないって知っているでしょう?」

「まぁな。危険だし汚いし長時間勤務だし。だが、給料は良いし公務員扱いだし貴族扱いにもなったぞ。憧れる側面もある」

「実情を誤魔化して募集してるのは国じゃないですか! お陰で加入後何人が辞めていったか……」


かっこいい謳い文句で募集をかけてるんだよなぁ。俺も引っかかった口だが。

だが現在では辞めていった者達の証言が広まり、なかなか加入者が居ないんだ。

貴族家から半強制のように出させたり、兵士から成り上がり?のような格好で参加させたりしてるけど。


ちなみに、貴族家から来たからといって特別扱いはされない。皆平等だ。いや、どちらかといえば同情というか憐憫というか。

偉ぶるヤツもいない。偉ぶった所で訓練で自分が聖騎士団の中では底辺だとすぐに気づくからな。

現場に行けば更に気づく。貴族だからと魔物が避けてくれたりしないから。


「お前たちとしてもありがたいだろ? 荷物は今の倍以上運べるし、休む拠点も作れるかもしれないし」

「そうかもしれませんが、一人の人間に依存するのは危険です」

「心配するな。しっかりと洗脳……ではなく教育するから」


洗脳って言った! この宰相様、洗脳するってはっきり名言した!!


「団の為にも何をするか聞いて良いですか?」

「あぁ良いぞ。そんなに変な事をする訳じゃないからな。

 まずは聞き取りをしている時に『お前の言う冒険者って聖騎士団のようだな』と教える。

 次に貴族の子女を偶然として出会わせる、そして惚れさせる。両思いって事にし、でも平民とは結婚できないと言わせる。

 ついでに聖騎士団に入れば貴族扱いになると教える。

 後はその子女に、この国は平民も大事にしている良い国だとアピールさせるだけ。

 ほら、これでこの国を守ろうとする婚約者付きの聖騎士団員の出来上がりだ」

「完全なハニートラップじゃないですか!」

「何を言っている? 誰が被害を受けた? 両思いなんだからトラップでも何でもないぞ?」

「必然を偶然と言ってますけど?!」

「恋愛ってのは何から生まれるか分からないもんだ。廊下の曲がり角で偶然ぶつかって恋に落ちる事もあるだろう?

 両思いになるかなんて意図出来る訳がないじゃないか」

「いや、貴族だから政略結婚って普通でしょ! 両思いじゃなくてもそれっぽく振る舞うでしょ!」

「失礼な。我が家も未だにラブラブだぞ?」

「結婚してからラブラブになっただけですよね?!」

「結婚前からラブラブだったぞ? お前は俺の何を知ってるんだ? 違うと言うなら証拠を出してみなさい」


くっ! 宰相様は俺の父親と同じくらいの年齢だから、当時の事とか知らないし。それに雲の上の人だから事情とか全然知らない!

ずるいぞ!


「勿論だが彼は遺跡担当にもなる。当事者だからな。

 もし今後勝手に召喚が発動して誰かが来た場合も役に立つだろう」

「それが真の目的ですね?」

「本人の希望だよ。本人のね」

「もうツッコミません。理解しました」

「理解してもらえて何よりだよ。じゃあ配属後は教育と訓練と運用は任せたぞ」

「了解しました」


宰相様と口論しても一生勝てる気がしないわ。

少年が来るまでに常識とかちゃんと教えておいて欲しいなぁ。そこだけはお願いしますよ!

これで一区切りです。

でもカイムの苦労は続きます。

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