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003 起動するの?!(中編)

「すみません、軽くで良いのでこの場所の説明をしてもらえますか?」

「おっ、おっ、聴きたいですか?」

「え、ええ、聞きたいですね」


専門的な話をされそうだが、こっちとしては危険物の場所や避難経路を把握しておきたい。

何も知らないのに始めるのは止めて欲しいんだよね。


「これが件の魔法陣です! どうです、壮観でしょう!」


いやいや、それは見たら分かるから。

20m四方の四角い部屋の中央の地面に、堂々と直径5mくらいのが書かれているんだもん。


魔法陣の周囲にはたいまつが設置してあり、少し煌めいている。

魔法陣に書かれているモノは文字のようであり模様のようであり絵のようでもある。

つまり何が書かれているかさっぱり理解出来ない。


「これを解析するのに五年かかりましたよ。きっかけはここにあるこの文字でした。これがですね……」

「待ってください! 私にはどれも理解出来ませんので、詳しい話はまた後でお願いします。

 それよりもですね、どのようにして起動するのかとか、何を送り込むつもりなのかとか、想定外の事が起きた場合どうするのか、とかを聞きたいですね」

「そうですか? しかし最初から説明しないと理解出来ないと思いますが……」


理解出来ない話を長々とされても、そっちの方が何も理解出来ずに終わると思います。

絶対に重要部分を聞き流してしまうから。


「では、こうしましょう! 私がする質問に答えてください。

 部下にも説明をしないといけないので、誰でも分かるように簡潔な説明でお願いします。

 少し理解力の弱い部下もいるもので……。質問返しをして時間をかけてもいけませんしね」

「……しょうがないですね。早く起動したいですもんね。分かりました」


ゴメンな同僚よ、バカ扱いして。

後で奢るから許してくれ。


「では早速。どうやって起動するのですか?」

「穴から発生した魔物石が魔力を保持する事が出来る事を発見しました。

 魔力を保持した魔物石を所定の位置に配置する事で起動出来るはずです」

「それは熱くなったり爆発したりする恐れはありませんか?」

「起動に使用するのは初めてなので分かりませんが、魔力を貯める段階では徐々に温度は上がりました。

 一定の温度から上昇しなくなったので、それが上限だと想定しています。その状態のモノに衝撃を与える等の実験をしましたが問題ありませんでした」


……既に危険な実験してるじゃねぇか。

そんな報告は受けてないぞ? 研究者ってこんな人の集まりなのかな? 起動がより怖くなってきた。


「どこに設置するのですか?」

「魔法陣の中にある円の所ですね。全部で24箇所です」


24箇所?! 4箇所くらいなら爆発に備えて各場所に盾を持った聖騎士団を配置しようと思っていたのだが、ちょっと多いな。カバーしきれないぞ。


「では次に。何を送る予定にしていますか?」

「最初は研究院の誰かを送るつもりでしたが、陛下から反対されたのでラッツで実験する事になりました」


当たり前だ。未知の事に人間を使用する考えがおかしい。

で、使うのはラッツか。どこにでも居る小動物だし、繁殖力が高いから実験にはよく使われていると聞いた事がある。

可哀想だが、それなら爆発四散しても問題なさそうだ。


「魔物石を設置するとすぐに起動するのですか?」

「いえ。設置後に魔法の使える者が魔法陣に触れながら呪文を唱える事で起動します」

「その事をどうして知っているのです?」

「そこの壁に碑文として書かれていました。実際に試した事もありますしね」

「試した?!」

「ああ、大丈夫ですよ。呪文を最後まで唱えませんでしたから。手を離したり唱えるのを止めると停まるのです」


止まらなかったらどうするつもりだったんだ?

こりゃ陛下に報告しなきゃな。

本当ならいますぐ中止にして陛下に報告したいが、こいつら無理矢理にでも決行しそうなんだよなぁ。

しかも俺には中止させる権利が与えられていないから、逆らいそうだ。


「呪文は私が唱えます」

「場所は何処で?」

「あそこですね」


どうやら我々の仕事は、この人の背後に居ていざという時に魔法陣から引き剥がす事になりそうだな。

しかし、まさか出入り口から反対の場所かよ。隠れる場所も無いし、盾でなんとか防ぐしかなさそうだ。

不安しかないぞ、この任務!!


「ラッツは中央に置きます。足の腱を切っているので、逃げる事はありません。では始めましょうか!!」

「いやいや、待ってください! これから指示を出すので、そうだ、後30分ほど待ってください!」

「……分かりました。30分だけですよ?」

「ありがとうございます」


さすが聖騎士を未来へ送ろうとか言い出す人だ。ヤバさが半端ない。


俺は慌てて同僚に指示を出す。

それと同時に他の研究院の人達に避難を呼びかける。……誰も外に出ないけどね。

しょうがないので最大に譲歩して、出入り口付近に居てもらう事になった。同僚を2人そちらに配置する。こっちに配置したかったのになぁ。



「そろそろ始めますよ~」


のんきなサウディさんにイラッとするが、もうここまで来たら腹をくくろう。

サウディさんの背後に左手に盾を持って位置取る。右手はサウディさんのマントの襟元を持っている。これでいつでも引っ張れるはずだ。


「では始めます!」


何を言っているのか全く分からない言葉?を唱えだした。

それに伴い魔法陣が淡く緑色に輝き出す。これが危険じゃなければ見惚れるような風景だが、逆に緊張感が増していく。


最後にサウディさんが大声で何かを言うと、雷のような明るさで魔法陣が光った。

慌ててサウディさんを感覚だけでこちらに引き寄せ、盾の陰に隠す。

流石いつも連携している同僚だけあって、盾がぶつかり合う音が聞こえた。俺の行動に合わせて盾で隠してくれたのだろう。


目潰しを食らったような事になったが、ようやく視力が戻ってきた。

サウディさんは……まだ目を押さえて蹲っている。同僚は……全員無事なようだ。

出入り口に居る同僚や研究院の人達は……うん、あちらも問題無さそうだ。衝撃も無かったし、建物が崩れるような気配も無い。


そして魔法陣の中央だが……そこにラットはいなかった。

代わりに黒髪の少年が目を押さえて転がっていた。


…………どちらさんですか?

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