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プロローグ2
本日も、よろしくお願いします。
次に気づいたのは、どうやら自分はその背中の羽でもって飛んでいるという事だった。
何故、羽があるのかはあまり疑問に思わなかった。
自分は背中の羽で飛べるし、常に食事を求めていると言う『事実』を認識しただけだった。
さまざまな疑問を持つべき状態にはあるけれど、それらはさして重要である。という気にはならないのだ。
宙に浮かんだ自分は、獲物を求めて飛び回るべきであり、そして食事の瞬間こそが自らの命をかけた非常に危険な時間であるという事だけが認識できたのだ。
それからしばらくの期間、意識が浮かんでは消え、唐突に思考が芽生えては消滅し、を繰り返した。
ある日、自分がかつて、高校生であった事を思い出した。
突然に、鮮明に、何故忘れていたのかが不思議な気持ちになるくらいに、急激に思い出したのだ。
そして、今自分の置かれている立場というか状態も理解した。
何度も繰り返した意識の覚醒のおかげで、理解出来てしまった。
『自分は、元高校生の蚊である』
と。