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神に見捨てられた国

発明王子視点です!


魔法使いが滅多に生まれない、それだけで我が国は他国からバカにされ続けてきた。


それは魔石で動く便利な魔道具を私が発明して流通させ、国力が豊かになってからも変わらなかった。



神から見捨てられた島国、近隣の国から囁かれる悪評は変わらない。



だから聖女が再び魔法使いの聖地と呼ばれる魔法王国に降臨され、かの王子と婚約したという話しを聞きーーその風潮はますます強まるだろうと、まさしく神に見放された気持ちになった。




その矢先のことだ、噂の国から尊い身分の女性との縁談が持ち込まれたのは。


公爵令嬢の彼女の祖母が先代の王の姉だったらしく、その身分は王家が保証するという。


思いもよらない話題の国との縁組に、私はーー疑心暗鬼にならざるを得なかった。


島国のため運搬のコストが嵩むことも要因となり、神に見捨てられた国と悪評で語られる我が国と、縁談を組んでまで親密な国交を結ぼうと言う国はほぼなかった。


私が結婚適齢期にも関わらず婚約者がいないのも、これまでろくな縁組がなかったからだ。


だからきっとこの縁談には、何か裏があるのだと思った。


例えばその女性がとてつもなく醜いだとか、国から追放されるほどの悪事を働いただとか。


他国の情報を集めるため、魔法王国にも密偵を置いているが、縁談の女性を調べて出てくるのは、聖女が現れるまで王子の婚約者だったことや、聖女が現れて身を引いたこと。


それから癒し魔法以外の全ての魔法を修めている、才女であるとかー。


悪い噂が不自然なほど聞こえてこない、まるでどこかで情報が規制されているような。


時間が許す限り調べてみたが、結局特定の情報以外はいくら調べても出てくることはなく、会ってみるまでわからないと結論付けた。


私はその上で、相手の姿も見ずに縁談を受け入れることにした。


どれほど醜い女性だろうが、人を貶めるのが好きな悪女であろうが、噂とは違い無才だろうが、かの国と繋がりが出来るという一点のみでお釣りがくる。


後は離縁されないように機嫌を取るだけだ、もっともかの国とは違い極端に魔法使いが少なく様々なものを魔道具で代用している我が国は、彼女の母国とは別世界に感じるだろう。


受け入れてもらえるかは、賭けに近かった。



少なくない時間をかけ、かの国から彼女はやって来た。


白銀の髪は涼やかで、風に揺れる度に太陽の光に当たりキラキラと輝いている。

深海の深い碧、さくらんぼ色の唇、視界に彼女を収めた全ての者が振り向かずにはいられない圧倒的美貌。


「お初にお目にかかります、発明王子と名高きアデル王子」


美しい所作で跪き、彼女は頭を垂れた。


「かしこまった挨拶は大丈夫ですよ僕達は家族になるのですから、顔をあげて下さい、失礼ですが名前を伺っても?」


「魔法王国フィナーシュカより参りました、公爵グランデの娘クレアと申します」


外見だけではなく声も美しい、向けられる眼差しに胸が高鳴るのを感じながら、私はその繊細な指先を掬い上げるように触れ、彼女を立ち上がらせる。


「馬車の用意が出来ています、こちらへ」




二人きりの馬車の中、思ってもいなかったことだが、私は緊張していた。


彼女が、想像していたよりも圧倒的に美人だったからだ。


こんなにも美しい人を、僕はいままで見たことがなかった、この神話から出てきそうな容姿の人が、私の妻になる?。


「あのーー噂に聞いたのですが、癒しの魔法以外の全ての魔法を納めているとか」

「はい、専門の者ほど高い知識は有していませんが、扱いに苦労はしません、最上位以外は使えます」


緊張した私の言葉に、彼女はあっさりと答えた。


「それほどの才能の方がーーなぜ我が国のようなーー」

「可能性を感じたからですわ」

「可能性?」

「ええ、魔法の力などなくとも国力を上げたこちらの国でしたら、魔法なんて大したものでないとーー思えるような気がしたものですから」

正面から至近距離で見た彼女は、うっすらとその目元を腫らしていた。


「ーーアデル様、私の旦那様になるお方、私に魔法より素晴らしいものがあると信じさせて下さいませんか?」


魔法の聖地と呼ばれる国から来た、自身も魔法使いである彼女は、私よりもまず私が発明した魔道具に興味を持った。


誇らしく感じると共に嫉妬した、彼女に興味を持ってもらえたそれらに、私は会って数時間も経っていないーー彼女に、恋をしているようだった。


「信じさせてあげましょう、私が発明した魔道具は誰もが使える素晴らしいものだ!これがあれば魔法のように血筋にこだわる必要もない、生まれも育ちも関係なく優秀な者が上に行ける」

「だから発展し続けている」

「ええ止まる理由がない、需要は増え続けている、だってどこの国でも結局一番数が多いのは持たざる者ですから、これからもずっと我が国が一番成長し続けるーー魔法だけが素晴らしいと皆が思っている間はね」


彼女は、私の話しを聞いて嬉しそうに楽しそうに。

「聖女様聖女様と浮かれている我が国は、時代の流れに一番遅れそうですね」


彼女クレアは、夢見がちだと側近さえ呆れる私の言葉を、馬鹿にすることなくあっさりと頷いて同意した。


「旦那様、我が母国が将来的に落ちぶれても愛する母国です、どうか見捨てないでくださいね」


碧の深い色の目は、まるで最初からそれが目的で嫁いで来たのだと言っているようだった。


誰もが羨む魔法の聖地の令嬢が、他国から見下されている神に見放された我が国にーー見捨てられないように嫁いできたのだと、言っているように聞こえた。


「見捨てませんよーー私の妃になるあなたの母国だから」

「そのお言葉、忘れないで下さいね」

私の目を見つめてにこりと笑う彼女は、少し話しただけでその聡明さが伝わる、素晴らしい女性だった。





彼女は我が国にあっさりと溶け込んで、癒し以外の魔法を全て扱える魔法の国のお姫様(彼女にはただの公爵令嬢ですっ!と怒られるが)として国民に絶大な支持を得た。


魔道具の発明と流通で著しく国力をあげている私も国民に愛されてはいるのだが、やはり神に見放された国という悪評が国民の中でもコンプレックスとして根強いようで、彼女を女神と見立てーー神に見放されたが女神が自分達を見ていると熱狂的な信者が現れだしている。


彼女の我が国での基盤は圧倒的早さで築かれて行き、もはや彼女に見捨てられたら私の支持率が危うい所まできていたが、私の目下の悩みはそんなことではなく。


「愛してます、クレア」

「!!!!!!!」

いつでも余裕で美しい笑みをうかべている彼女だが、どうにも恋愛事には疎いようで。


「君はいつも美しく可愛く聡明でーー我が国が神に見放されたなんて絶対に嘘だと断言できる。君のような素晴らしい人が、聖女がかの国に現れてくれたお陰で、今僕の目の前にいるのだから!!!」

「やめてください!!過分です!!私をもう褒めないで!!」

少し褒めただけで顔を真っ赤にして俯いたり顔を背けてしまうのが、悩みだった。


可愛い顔が隠れてしまって、悲しい。


「???こんなに美しいのに、褒められ慣れていないのですか?」

「……以前の婚約者が……いえ、あまり気が回らない人だったもので」

「では私は言い続けますので慣れて下さい、毎朝おはようのキスもしましょう」

「待って下さい、旦那様、落ち着いて話し合いましょう??」


真っ赤な彼女だが、本当に嫌な時はうじ虫でも見るようなぞくぞくする目で見てくるので、これはまだ大丈夫な時の顔だった。


「僕は君と毎朝キスをします」

だから押した、徹底的に押した。


「……少しでも慣れてもらわないと、子作りもままならないので……」


彼女は、癒しの魔法以外の全ての魔法が使える。

だから照れすぎて暴れると、誰にも手がつけられないのだ。


「その件につきましては、情緒酌量の余地もなく……」

顔を真っ赤にして俯く彼女は、色々と困るがとても可愛い。


キス一つでも慌てているのも、困るが好きだ。


キスも僕とが初めてだったらしいし、それまで婚約者だった魔法王国の王子は一体何をやっていたんだろう。


ーー僕が神に愛されてるから!?彼女は僕の望みのままに清い身だったんだろうか!?


「旦那様旦那様、旦那様が恋愛ごとにお詳しいのは私にはありがたいのですが、これまでとの落差が…………お手柔らかにしていただきたく」

「クレア、クレア、僕はこれでもかなり我慢しているほうだし、これぐらいは普通ですよ」


彼女が僕の言葉の真偽を確かめるように、目線で周囲の様子を伺っている。

周囲がほぼほぼ僕の意見と同意見なのを察してか、彼女がキレた。


「私は!そんな普通!知りませんから!」


碧の目にいっぱいの涙を溜めて怒る彼女には困ったがーーやはりとても可愛かった。


「だから、最初はキスで慣れて下さいと」

「わかり、ました」


大人しくキスを受け入れてくれた彼女に、僕はそれから毎日キスをすることになる。


朝と昼と晩と二回ずつだ。

「朝だけでは!?多いです!」


調子に乗って舌を入れたら、怒髪天で燃やされた。


クレアさん!夫婦間での魔法は、禁止にしませんか!?。

他者視点では、わりと……なクレアさん。

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