第91話 オーク軍・其之壱
トーキー大将軍の、
「500万…。第一陣でしょうか?」
との疑問に、エルフの国主が、
「いいえ、どうやら、全軍のようです。」
「とは言え、相手は本国に余力を残していますが…。」
「いずれにせよ、“スライムの国”と戦った際に消耗した軍事力が、完全には回復しきれていないようで、総動員は無理だった模様です。」
と答えた。
俺が、
「あー、確か…。」
と、魔人姉妹に視線を送ったところ、姉が、
「あの時は、スライム軍によって、200万ほどの敵を屠ったかと…。」
と記憶を辿り、妹が、
「特に“前スライムロード”の活躍が目覚ましく、オーク四将軍のうち二体を倒していました。」
と、続いたのである。
俺が、
「やっぱ、あのメタル系って強かったんだな。」
と得心していたら、魔人の姉が、
「ええ。なので、主様方が撃破なされたのには、正直、驚きました。」
と、述べたのだ。
これに、一年生書記が、
「私の“叡智”による勝利です。」
〝フフン!〟とドヤッたものの、瞳を輝かせた三年生ウィッチによる、
「オォ~、エイチノスキルヲ、テニイレテマシタカ~?」
との純粋な質問に居た堪れなくなったのだろう、
「すみません。ごめんなさい。図に乗りました。」
と謝っていた。
この世界に、そのような能力があるのかどうかは分からないが、三年の魔女は“OTAKU”なので、[転○ラ]や[蜘○なに]あたりで知っていたのだろうと思われる。
それはさて置き。
斥候に放っていた【アサシン】らの計算によれば、明日の午前中にはオーク軍が国境付近に到着するであろうとの事だった。
「連中が訪れるのを、わざわざ待ってやんなくてもいいような…。」
「こっちから仕掛けるか? 今すぐにでも。」
と、提案した俺だったが、気になったので、
「実際、どんな感じだったんだ?」
と森人族の長に確認してみたところ、
「私が見たのは、オークを女性陣が、バードを男性陣が、それぞれ担当している光景です。」
「他にも、エルフとハーフエルフに、植物系や昆虫系が、およそ50万ずつ参陣していました。」
「つまり、未来は既に変わり始めているのです。」
と、返したのである。
聖女が、
「慎重になった方が良いのでしょうか?」
と、質問したら、
「…。おそらくは、積極的に行動して構わないでしょう。」
「これからの活路を切り開くためにも。」
と国主が表明した。
そこで、俺は、
「じゃあ、奇襲に打って出るか。」
「つっても、〝正面から堂々と〟だけどな。」
と、まとめたのである。
国の境目を越えて、敵の領内に足を踏み入れた俺達は、なおも進む。
豚どもの軍勢と遭遇したのは、PM16:00を過ぎた頃だった。
予想外の展開に、敵軍の先頭集団が、
「なッ?!」
と驚き、歩を止める。
かなり後方から、
「何事だッ!?」
との大声が聞こえてくるなか、俺は、【絶対服従】を使うのだった―。