第90話 今後の対策
「〝暗黒の時代〟を回避するには?」
と窺う俺に、森人族の長が、
「これより先は、“限りなき御方”が、少しでも多くの格上を、死滅させるか、致命傷を負わせるべきかと…。」
と、返したのである。
「ふむ。〝出来るだけレベルアップしておけ〟という事か。」
と頷いた俺が、
「それであれば、“ゴーレムのダンジョン”でも問題なそうだが…?」
と、新たに疑問を呈したところ、
「攻略は可能なのですか?」
と逆に聞き返されたので、
「いや。」
と、口を閉ざしてしまったのだ。
確かに、現時点での俺たちにとって、あのダンジョンは〝ほぼほぼ詰み〟の状態になっている。
LV.90以上の面子は、[ミスリルのゴーレム]を突破できなければ、カンストに近いと言えなくもない。
そんな“ミスリル”を倒せずにいるのだから、ダンジョンに関しては最早お手上げだ。
暫しの沈黙の後に、
「魔王と闘っている俺は“進化”していたか?」
と国主に別の質問を投げかけてみたら、
「いいえ? そのような印象はありませんでしたが…。」
との事だった。
俺は、
(進化しさえすれば、魔王に勝てるかもしれねぇな。)
(その為にも、より強くなるのが必須か…。)
(ここは彼女の案を受け入れ、俺が直に、ロードや、それに準ずる敵を、打ち破っていくのが最善みてぇだな。)
と、思ったのである。
勇者が、
「今回は、どのような作戦を用いられる予定なのでしょうか?」
と尋ねた。
これに、森人族の長が、
「〝策〟と呼べるものはありませんが…、まずはオーク軍を撃退し、“瞬間転移”で西に赴きバード軍を押し戻す。」
「そこから、双方の国を制圧するのが良いでしょう。順番に。」
と、答えたのである。
これらのやり取りを経て、
「よし。それじゃあ、明日にでも出発しよう。」
と締め括る俺だった。
翌日の昼過ぎに、俺達は、国主によって、南の国境付近へと“転移”した。
その顔ぶれは、トーキーから訪れているメンバーと、冒険者だった8名に、森人族の長や、その補佐官である。
ちなみに、賢者は館に残った。
都で見聞を広めるべく…。
さて。
パーティーのリーダーであるエルフ姉が語っていたのを〝フッ〟と回想した俺が、国主に、
「300年に亘って平和が続いてたんだっけ?」
と、訊ねてみたら、
「はい。今日まで幾らかの小競り合いは生じていましたが、大きな戦は久しぶりです。」
「あの頃は、“現・補佐官”の世代が全盛期で、どなたも相当な腕前でしたが…、その殆どが年齢によって、他界していたり、隠居なさっておられます。」
「まだ若かった私は、何度となく、当時の国主様に随行したものです。」
と昔を懐かしんだのである。
小一時間後――。
斥候から帰ってきた【アサシン】たちによれば、豚どもの軍勢は500万くらいだそうだ。
その95~99%は、きっと【絶対服従】が有効だろうから、さしたる問題はない。
あとは、どんな奴が率いているのかが、いささか気掛かりであった―。