第88話 対立と和解
俺の【可視化】によると、[国主]のレベルは121で、攻撃・回復・補助の魔法を殆ど収得しているようだった。
ジョブは【剣士】のようだが、森人族は魔法に特化しているらしく、職種に関係なく使用できるらしい。
後で冒険メンバーから聞いた話しによれば、なかでも、現国主は、この世界におけるエルフの歴史上で一二を争う天才との事であった。
ちなみに、[国主補佐官]はLV.117で、回復系に補助系と光系の魔法や、“マジック・シールド”などのスキルを、扱えるようだ。
“森人族の長”が、紅茶を嗜みながら、計4名のエルフ&ハーフエルフに、
「この国に部外者を招き入れるには、最高責任者である“国主”の許可が必要である掟は忘れていませんよね?」
「いずれにせよ、規則を破れば、最悪、死をもって償うか、運が良くても、国外への永久追放になりますが…。」
と、冷たい笑みを浮かべた。
これには、4人が、
「は! あ、いえ、そのぉ…。」
「祖国の危機を知り、居ても立っても居られなかったものでございましてですので、ござりまして。」
といった具合に、〝しどろもどろ〟になってしまったのだ。
仕方ないので、俺が、
「ま、いいじゃねぇか、これから大変なことになるんだろ? この国は。」
「コイツラは、それを救いたい一心で行動したんだから、勘弁してやれよ。」
と、意見したところ、国主である天才さんに、
「私どもの国家の内情に、口を挟まないでくれません?」
と軽く睨み付けられたのである。
これに〝カチン!〟ときた俺は、条件反射的に【チャーム】を発したのだった…。
事を終えたベッドにて、“森人族の長”がトロ顔のまま、
「これからは、“至高の御方”と、お呼びしても?」
と、言い出したので、
「いや、それはもう、こことは別の世界にいるから、却下だ。」
と阻止しておいた。
「そうなのですか?」
と、窺った彼女が、
「では…、“限りなき御方”であれば?」
と新たに提案してきたので、
「それだったら、大丈夫だろう。きっと…。」
と、OKしたのである。
彼女に左腕枕してあげながら、
「お前、ひょっとして、“見通す眼”で、こうなることが分かっていたんじゃ…?」
と質問してみたところ、
「さぁ、どうでしょうね?」
「うふふふふ♡」
と、はぐらかされたのであった―。