第86話 国主のスキル
「未来を?!」
と少なからず驚く俺たちに、エルフ弟が頷きながら、
「〝断片的に〟ではございますが。」
と、述べた。
(“進○の巨人”みたいなもんか?)
と俺が想像していたところ、ハーフエルフの女性が、
「今回、オークとバードが、私たちの祖国に攻め込むべく、戦準備を整えているという事も、国主様のスキル“見通す眼”で判明したのだと、推測できます。」
と、口を開き、その兄であり、背丈が167~168㎝で、銀髪を短く刈っている、【騎士】が、
「皆様を連れて行くことを、国主様が予知していれば、既に首都中に広まっており、全ての門が閉ざされているかもしれません。」
と眉間にシワを寄せたのである。
勇者が、
「都で生活していらっしゃるエルフの方々は、どれくらいのレベルなのですか?」
「そこまで高くなければ、主様が“服従”させれば解決するのでは?」
との疑問を呈す。
これに、エルフの姉でもあるパーティーのリーダーが、
「我々の国は、ここ300年ほど戦火を免れてきたので、LV.40が平均的でしょう。」
「ですが…、国主様は120を超えていらっしゃるうえに、もう一つ特別なスキルがございます。」
「その名は“抗う者”。」
「これには、主様の“絶対服従”のような支配系が、無効化されてしまうのです。」
と、答えた。
(つまり、俺がどれだけ強くなっても、従えるのは不可能な訳か。)
「…、成程。」
「それほどまでの逸材だから、国主になったんだな。」
と納得する俺に、ハーフエルフ妹が、
「いえ、違います。」
と、返し、エルフ姉が、
「何代も前の国主が収得していた“譲り渡し”によるものです。」
と続いたのである。
このエルフらの説明によれば、【譲り渡し】は、自身のスキルを他者に受け継がせることが出来るのだそうだ。
某・平和の象徴“オー○マ○ト”達みたいな[ワ○・フォ○・オー○]のように。
そして、【見通す眼】を得ていた森人や、【抗う者】を持ち合わせていたエルフが、国主に就任してきたらしい。
ま、別に、髪の毛を食べたりだとか、DNAを取り込むのではないそうだが…。
それはさて置き。
「訪れてみないことには何も始まらねぇし、ウダウダ考えず、まずは、出発しようぜ。」
と、言う俺に、賢者が、
「ご主君、お供させてもらっても宜しいでしょうか?」
「エルフの国に足を踏み入れる機会など、まず巡ってこないので。」
と目を輝かせつつ、窺ってきたのである。
「構わねぇけど…、魔石の選別は?」
と、聞いてみたら、
「そこそこ余裕があるので、問題ありません。」
との事だった。
「じゃあ、魔人姉妹も?」
と視線を送った俺に、二人が頷く。
この姉妹も伴えるのであれば、貴重な戦力になるので、俺は快く承諾したのであった―。