第84話 予めフラグを立てていたからだろうか
昼食後――。
会議室にて、[国主補佐官]が、
「“魔道機関車”と“飛行艇”は、トーキー王国に派遣している100人が帰ってこないと難しそうですが、魔銃や、眼鏡に、羽なし扇風機であれば、ドワーフ国の職人らでも製造が可能そうなので、下請けさせてもらいたいです。」
と述べ、
「〝売り上げの1割を納める〟のでは、如何でしょう?」
と、提案した。
これに、トーキーの宰相が、
「〝3割〟でないと、容認できかねます。」
と対抗したことによって、両者が一歩も譲らない口論となってしまったのだ。
(埒が明かねぇなぁ。)
と、思った俺が、
「2割で手を打て。」
と促したところ、どちらも快諾したのである。
「では、直ぐにでも国主を動かして、生産します。」
と、うちの[科学開発班]から諸々の設計図を譲り受けた補佐官が席を立つ。
賢者による、
「ならば、私が、“瞬間転移”で、お送りしましょう。」
との心遣いにて、彼女らは、その場を後にしたのだ。
何とも、嵐のような女傑だと苦笑いする俺たちだった…。
嵐と言えば、夕刻より風が強まってきた。
トーキー王によると、「台風が近づいている」との事だ。
確かに、その翌日から天候が荒れたのである。
ノロノロ運転だったので、2日間は滞在していた。
野外での作業は無理と判断したドワーフたちが、魔銃などの作成に協力してくれた結果、勇者一行の【狙撃手】らに配る本数が完成したのである。
しかし、弓道部だった10人ほどが、「使い慣れた弓矢のほうが良い」と主張したので、それを許可した俺は、余った分を、他の者たちに配ったのだった。
台風一過。
幸いにも、勢力が弱めだったので、被害は最小で済んだみたいだ。
朝の晴れ渡る景色を、部屋の窓から眺めつつ、俺は、再びダンジョンに赴くべきか否か、考え込んでいた。
行ったところで、[ミスリルのゴーレム]を倒せそうにないし、レベル上げにも飽きていたのだ。
そこへ、城兵の男性が一人、伝達に来たのである。
「エルフたちが訪問しています。」
と…。
玉座に腰掛けた俺が、
「待たせたな。」
と、声を掛ける。
直立していた冒険者らの、リーダー格と思しき、金髪で尖がり耳の女性が、
「お目にかかれて光栄です、トーキーの魔人殿。」
と会釈し、他のメンバーもそれに倣った。
金色や銀色の髪である男女のエルフが2人ずつに、人間であろう黒髪と茶髪の男女が1名ずつ、更には、オスで虎型の獣人と、メスで豹型の獣人が、1体ずつの、総勢8名といったパーティーである。
「で、何用だ?」
と、訊ねた俺に、リーダーが、
「まず先に、初対面であるにも関わらず、お願いする非礼を、お詫びします。」
「実は、我が故郷でもある“エルフの国”を救って戴きたいのです。」
と申し出たのだ。
詳しい状況はこれから聞いてみるとして…、意外にも早くエルフと接触できたのは、やはり、フラグを立てていたからもしれないと、一人で勝手に納得する俺であった―。