第79話 兎の王との攻防戦・其之参
兎の王による、右の上段蹴りが、
ズバンッ!!
と、左頬にヒットした俺は、
ズザザ―ッ!
と横倒れしたのである。
そんな俺を追撃すべく、王が近づいてきた。
それを阻もうと、8体ずつ(計40体)のヘルハウンド/ジャイアントアント/ハーピー/ラミア/アラクネに、勇者/聖女/魔法剣士/トーキーの各将軍/南方と西方の領主たちが、剣や槍に戦斧であったり爪と牙などでの攻撃を試みる。
しかし、ロードのパンチ・キック・肘鉄・膝蹴り・掌底などによって、全員が、ぶっ飛ばされてしまったのだ。
それは、さながら、ジャッ○ー・チェ○か、岡田○一か、といった感じだった。
立ち上がった俺が、槍の先で地面を掬う。
最大幅50㎝×長さ1.5Mの、歪なクリスタル状である数十もの“土の粒”が、敵に迫る。
兎の王が、それらを、拳や足で、
ドゴォンッ!
ズバァンッ!
バゴォンッ!
ズドォンッ!
と、粉砕していく。
その間に、【ミドルヒール・オール】を発動した聖女によって、回復していく俺たちだった。
クレリックの[加護]には1日4回までという制限があるらしい。
【ハイクレリック】であれば、その回数は倍になるとの事だ。
いずれにせよ、王とのバトルが開始されて、38分が経過しようとしている。
既に、4回の“加護”が使い果たされていた。
更には、[大地の槍]の能力も出し切っていたのである。
ここ迄で、接近と遠隔のメンバーが、物理や魔法で攻めたり、治癒を、繰り返し行っていた。
しかし、誰もが、最早、限界を迎えているようだ。
一方、ロードは、“ポーション”と“ハイポーション”を、1個ずつ用いたきりなので、多分きっと、それ以上の手持ちが無いのだろう。
とは言え、まだまだ余裕そうに見受けられる。
だが、ダメージは確実に蓄積されている筈だから、「効いていないぞ!」といったアピールであろうと推測できた。
いずれにせよ、奴も、俺と同じで、〝あと1~2撃で勝負が決まる〟と悟っているようだ。
俺が、槍を、左から右へと薙ぎ払う。
それをバックステップで躱した敵が、逆襲で跳び掛かってくる。
ブンッ!
と放たれたジャンピング後ろ回し蹴りを、下に避けた俺は、左の掌を地に着き、直径8Mの魔法陣を展開した。
次の瞬間、最小部分15㎝×最大部分10M×全長8Mの“竜巻”を発生させたのだ。
ビュオオオオッ!!
と、渦巻く風に取り込まれた兎の王が、〝ぐるん ぐるん〟回転しながら上昇していく。
どうやら、HPを削られているようで、
「うッ!」
「ぐッ!」
と王が呻いていた。
最頂に達したところで、竜巻が〝スッ〟と消える。
ヒュゥ―――――ッ!!
と、うつ伏せで墜ちてきたロードが、
ドオォンッ!!
と地面に全身を打つ。
(終わった。)
と、思った俺が、軽く「ふぅッ。」と息を吐く。
それが油断に繋がってしまったのであった―。