第77話 兎の王との攻防戦・其之壱
一夜が明け、この国のモンスターで【瞬間転移】を使える者たちによって、A班とB班が、王都から南へ1㎞ほどの所で合流したのだ。
朝食中に、兎の王子が、またしても「戦闘現場の近くまで行きたい」と願い出たので、母親である王妃や領主らが諭す。
しかし、彼の決意は揺るがない。
そこで、俺は、優れた甲冑+パワー自慢のミノタウロス元帥およびトロールに、王子を守らせる事にしたのだ。
いざという時には、“転移”で遠くまで逃がすのを条件として。
「はぁ―。」と諦めの溜息を吐いた王妃が、
「ならば、私も側に居ましょう。」
と、覚悟した。
これに、南方領主が、
「分かりました。お二方を尊重します。」
と述べ、西方領主も、
「ならば、もう、反論せずに従いましょう。」
と、同意したのである。
AM10:00――。
都の南門から50Mぐらい離れた位置に主要メンバーを布陣させる。
そこから約10M南下した場所に、王子/王妃/護衛係/ミノタウロス/トロール/遠隔線チームを、待機させた。
ここの城は、王都の中央広場の南東に在るらしい。
翼を出現させた俺は一人で、そこへと向かったのである。
俺は、王城の東側の宙に浮きながら、【咆哮】を発動した。
ちなみに、眷属らには効かない。
あくまで、兎の王への〝挨拶代わり〟だ。
これを受けて、最上階の窓から、1体のアルミラージが顔を覗かせたのである。
[兎]は〝1羽、2羽〟と数えるのが正解らしいが、相手は魔物なので、この際、良しとしよう。
…。
話しを元に戻して。
“ロード”に間違いないであろうソイツに対し、〝付いて来い〟と言わんばかりに、顎を横へ〝クイッ〟と動かした俺は、南へと飛行した。
街中での激突は、周囲に被害を齎してしまうので、避けておきたかったのだ。
意味を理解したらしい兎の王が、民家の屋根から屋根へと、〝ビョンッ!〟〝ビョンッ!〟と跳ね渡りながら追ってくる…。
目的地にて、俺が、先に降下した。
都の壁を勢いよく越えた王が、
ズダンッ!
と着地して、ゆっくりと歩を進める。
ロードは、身長が170㎝くらいで、体毛は金色であり、瞳は黒い。
白い螺旋状の角は、1M程ありそうだ。
緑色の道着の上に、青紫色で鉄製の、胸当て/籠手/脛当てを、装着している。
明らかに【武闘家】だ。
俺たちの4Mぐらい手前で止まった兎の王が、
「やはり、“トーキーの魔人”のようだな。」
と、口を開いた。
更に、
「ん? 南方と西方の領主ということは…、アイツらを倒したのか。」
と察したのである。
「お前も、すぐに、旅立たせてやんよ!」
と、宣告して、アイテムBOXから[大地の槍]を取り出した俺は、
「クレリック!!」
と声を掛けた。
「はい!」
と、応じた一年生書記による、
「皆さん、お願いします!」
との合図で、一斉に【加護】が発せられたのであった―。