第76話 A班の攻防戦・其之伍
俺の槍と、烈風将軍の大剣とが、横に、縦に、斜めに、
ガキィンッ!
ガシャンッ!
ガシィンッ!
と、ぶつかり合う。
攻撃力が上回っている相手に押された俺は、自身の翼を使って、2Mほど、
ビュンッ!
と退き、
スタッ!
と、着地した。
「お前よりも、こちらの方が強いみたいだな。」
と余裕そうな敵将が癇に障った俺は、[大地の槍]の腹を、
バァアンッ!!
と、地面に叩き付けたのである。
これにより、敵の将軍に向かって、一直線上に地が隆起していく。
一番手前は15㎝程度だが、30㎝、45㎝、60㎝、75㎝、…、
ズドドドドドドドドッ!!
と段々に高くなっていくそれが、烈風将軍の眼前に至る頃には、3Mぐらいになったのである。
「なッ!?」
と、驚きながらも、上空5Mに逃れた相手が、
「アーティファクトか!」
と眉間にシワを寄せ、苦々しそうにしていた。
しかし、
「!」
と、何かに気付いた敵将が、〝ニヤァ~ッ〟と陰険な笑みを浮かべたのである。
「ん?」
と首を傾げた俺に、敵の将軍が両翼を大きく動かして、全長10Mの“竜巻”を放った。
最小部分は20㎝くらいで、最大部分が15Mを越えている、“風の渦”が、
ビュオオオオオオオオッ!!
と、俺に襲い掛かってくる。
「マジかよ…。」
と度肝を抜かされた俺だったが、急ぎ、槍の先で地に横ラインを引いて、厚み4M×幅8M×高さ10Mの“壁”を、
ズドオオ――ンッ!!
と、出現させたのだ。
派手に、
ドッゴオオォォンッ!!!!
と正面衝突した双方が、〝ス―ッ〟と消えていく。
その最中に、烈風将軍が、俺の後方へ、〝ギュンッ!〟と飛行したのである。
(あそこには確か…。)
(!!)
(奴の狙いは、王子か!)
と、察した俺が、
「待ちやがれぇッ!!」
と飛んで敵将を追う。
だが、完全に出遅れてしまい、距離を狭められそうになかった…。
迫りくる烈風将軍に、兎の王子が、
「はッ!」
と、たじろぐ。
その側に控えていた護衛らが、武器を手にして構える。
「父親に会わせてやろう。」
「あの世でなッ!!」
と恫喝する敵将の顔面に、直径20㎝の“火の玉”が、
ズボォウッ!
と、ヒットした。
どうやら、王子たちの真後ろに居た“魔法使い”が機転を利かせたようだ。
彼女は、うちらの高校に留学している三年生であり、[国際コース]に在籍している。
背丈は165㎝程であろう、肩より長い金髪はウェーブしており、瞳は青い。
黒いマント&とんがり帽子は、いかにも【魔女】といった印象だ。
ちなみに、一年の生徒会書記をリーダーとした[科学開発相談部]のメンバーでもあり、“OTAKU”を自負しているらしい。
何はともあれ、敵の動きを止めたウィッチが、
「アナタノォ、スキニワァ、サセマセェン!」
と片言の日本語で意思表示したのである。
「おのれぇッ!」
「皆殺しにしてやるから、覚悟しろぉッ!!」
と、怒りを顕わにした烈風将軍が、新たに“竜巻”を発動すべく、翼を〝グイッ〟と反らす。
その背中の真ん中あたりを、俺が、
ズドンッ!!
と[大地の槍]で貫いた。
「がはッ!」
と、血を吐く敵の将軍に、
「先王に再会するのは、お前の方だったみたいだな。」
と述べた俺が、槍を右斜め下に〝ブンッ!〟と振り払う。
これによって、敵将が〝ヒュゥ――ッ〟と堕ちていき、地面に、
ズダンッ!!
と、全身を叩きつけられたのである。
ゆっくりと下降した俺が、烈風将軍から2~3M離れた左側の地に両足を着けた。
「うッぐッ!」
と奥歯を噛み締めながら起き上がろうとする敵の将軍に、
「もういい、終わりにしよう。」
と、告げた俺は、槍の切っ先を地面に添え、
グルンッ!
と右回転させたのである。
すると、敵将の中心あたりから、ボールペンみたいなフォルムをした最大幅5Mの歪な“土の柱”が、天に向かって勢いよく、
ズッドオオォォ――ンッ!!!!
と、伸びていった。
長さは20Mぐらいあるもしれない。
実のところ、これは未だコントロールしきれていないので、鍛錬が必要だ。
何はともあれ、この一撃にて、息絶える烈風将軍であった―。