第73話 A班の攻防戦・其之弐
[烈風将軍]は、身長が180㎝ほどで、オスの、“ヴォルパーティンガー”である。
体や翼は白く、鹿の角と瞳は黒い。
緑と黒による“鉄色”の鎧は【騎士】用だ。
そんな兎野郎が、飛行しながら左から右へと薙ぎ払った俺の[大地の槍]での一撃を、
ガキィインッ!!
と、大剣で受け止めやがった。
2Mぐらい離れた場所に〝スタンッ〟と着地して、
「そっちも“加護”を付与しやがったかッ。」
と口を開いた俺に、
「その風貌、“トーキーの魔神”か!?」
と、敵の将軍が、いささか驚いた。
北方領主が、直径20㎝くらいの球体である“紫色の魔石”が、天辺に付属している杖を、前方に突き出して、魔法陣を展開する。
直径2Mの、その魔法陣は、紫色と白色が入り混じっているようだ。
「ヘル・フラッシュ!」
と唱えた敵の領主に呼応して、魔法陣と同じ色の光が、四方八方に発せられた。
これによって、ソイツまであと3Mといった距離に詰めていたミノタウロス元帥や中将軍などの、接近戦メンバーの目が眩んだ。
敵の領主が、先程と同じ色で直径5Mの魔法陣を出現させる。
そこから、幅20㎝×長さ1Mかつ、白色に紫色の縁取りといった、【光線】が、50本ほど、
ビュンッ!ビュンッ!ビュンッ!ビュンッ!
と、放たれて、近距離戦の集団を、
ズバッシュ!
ズブシュッ!
と貫いた。
ただ一体、ミノタウロスを除いては。
どうやら、B班のトロールみたいに、ドワーフ及び魔石によって作成された、元帥の鎧には効かなかったようだ。
そんなミノタウロス元帥が、両目を瞑ったままで、
ズンッ!ズンッ!ズンッ!ズンッ!
と、歩を進め、勘でバトルアックスを〝ビュオッ!〟と振り下ろす。
まるで、スイカ割りのように。
【ハイクレリック】である敵の領主が、
「なッ?!」
と驚きながらも、直径4Mの円形で、紫っぽい本透明の、【マジック・シールド】を出して、
ガシイィンッ!!
と、受け止めた。
しかし、猛牛のパワーによって、そのシールドに、
ビキビキビキビキィ―ンッ!
と亀裂が生じていく。
持ち堪えられない事を察した北方領主が、
「くッ!」
と、大きくバックステップしたところ、
バリィンッ!!
と盾が割れて、ミノタウロスの戦斧が空を斬った。
「ん?? 外したか?」
と、首を傾げる元帥の左右から、“魔法”に“矢”などが飛んでいく。
これは、およそ30M後方にいる仲間たちの援護によるものだ。
敵の領主が再び[マジック・シールド]で防いでいる最中に、クレリックらが【治癒】や【ステータス異常回復】を発動した。
〝スッ〟と目を開けたジャイアントアント参謀役が、
「それでは皆さん、反撃開始といきましょうか。」
と周囲に声を掛けたようだ―。