第71話 B班の攻防戦・其之伍
トロールが、棘付きの鉄棍棒を、右から左へと振るう。
これをバックステップで躱した[凍氷将軍]に、“ヴォルパーティンガー”である南方領主が、上空から剣で突こうと迫った。
しかし、〝あんぐり〟と口を開いた敵の将軍が幅1M×長さ4Mの“クリスタル状の氷”を発射したのである。
南方領主が慌てて左に避けようとするも間に合わず、右の翼の下半分が、
ズバンッ!!
と貫かれてしまった。
バランスを崩して落下する領主に、凍氷将軍が、同じ技をくらわせようと準備にかかる。
その顔を狙って、魔法剣士が、幅5㎝×長さ4Mの“水の刃”を〝ズバシュッ!〟と放つも、ギリギリで躱されてしまう。
ズダンッ!
と、着地して、[アイテムBOX]から取り出した“ハイポーション”を飲んだ南方領主の翼が修復されていった。
左に南方領主・真ん中に魔法剣士・右にトロールの順で横一列に並ぶ。
深く〝スーッ〟と空気を吸い込んだ敵の将軍が、それまでよりも広範囲に亘って【凍てつく息】を、
ビュオオオオォォォォ――ッ!!!!
と吐く。
これによって、領主たちが、徐々にではあるが確実に、
ビキッ!ビキッ!ビキッ!ビキッ!
と、氷漬けにされていく。
(くッ! これは、まずい!!)
と焦る魔法剣士ではあったが、身動きが取れない。
自分の勝利を信じて疑わない凍氷将軍の右側から、
ズバァアンッ!!
と、勇者による“雷”が飛んできた。
ジャッカロープ(獣人型)である将軍が、
「!」
と既の所で上体を後方に反らし、直撃を免れる。
ダッシュで距離を詰めてきたトーキー王国の、大将軍がラージソードを縦に振るい、小将軍がレイピアを突き出す。
が。
厚み50㎝×最大幅4M×最長1.5Mの[山型の氷壁を]瞬時に作成した敵の将軍によって、
ガギィンッ!!
ガツンッ!!
と、阻まれる。
「ふぅーッ。」
と安堵した凍氷将軍の頭上3Mぐらいの位置に、直径5Mの白い魔方陣が展開された。
そこから、幅10㎝×長さ50㎝の【光線】が、100本ほど、
ビュンッ!ビュンッ!ビュンッ!ビュンッ!ビュンッ!ビュンッ!ビュンッ!ビュンッ!
と、降り注ぐ。
そちらに向けて、敵の将軍が、口から、最大幅1Mで歪な形の“逆氷柱”を、
ズドォンッ!!
と出現させる。
20~30本の白い光線が、
バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!
と、当たるも、完全には破壊できない。
しかし、それで良かったのだ。
何故なら、凍氷将軍の意識を逸らすのが、聖女たちの目的なのだから。
ビームもツララも共に消えた刹那だった。
敵将の右首に、
ザシュッ!!
と何かが刺さったのは。
「?!」
と、驚く凍氷将軍の首元から、幅10㎝×長さ30㎝のダガーの切っ先が抜かれていく。
それを行ったのは、二年の生徒会書記のようだ。
ブシュゥ――ッ!
と血しぶきを上げながら、
(いつの間に??)
(!)
(アサシンの素早さを活かす為だったか!!)
と、悟った敵将の心臓に、正面から、
ズブシュッ!!
と剣を突き刺したのは、【魔法使い】の炎で氷を溶かしてもらった“南方領主”であった―。