第69話 B班の攻防戦・其之参
ガキィインッ!!
という衝撃音が辺りに響き、一瞬の沈黙が訪れた。
「なッ?!」
と、驚いたのは、〝スタッ!〟と着地した凍氷将軍である。
(なんだ? この装備品は??)
自身の戦斧が当たった箇所を見てみたところ、かすり傷一つ入っていなかった。
それに気を取られていた将軍が、「はッ!」として、後方に跳躍する。
誰も居なくなった空を、上から〝ビュオッ!〟と裂いた“黒鉄の棍棒”が、
ズドンッ!!
と、地面を打ち付けた。
惜しくも敵を捕らえられなかったトロールが、鎧の左腹部を軽く〝ポンッ〟と叩いて、
「うん。ドワーフの技術も、魔石の効果も、共に素晴らしい。」
と微笑んだ。
(どうやら、“加護”でステータスが上昇しているだけではなさそうだな。)
と、思考する凍氷将軍であった…。
勇者や聖女は剣を、ヘルハウンドは爪を、ラミアは尾を、東方領主に振るう。
更には、【魔法使い】や【狙撃手】が援護射撃していた。
が。
自分を中心に、縦4M×横4Mの正方形かつ半透明の青色である【シールドルーム】を出現させた東方領主によって、
ガシィンッ!
ズバァンッ!
と全ての攻めが阻まれていたのである。
その状況を観察していた一年生書記が、
(あれはもう、ほぼほぼ、“神○塔”における灯台の大型版じゃないですか!)
(しかも、頑丈だし!!)
と、苦々しそうにしていた。
他にも、魔法を扱う山羊型のモンスターである[ワーゴート]たちのリーダー格が、
「我々が“サテュロス”にまで進化していれば、あのような部屋、破壊できたであろうにッ!」
「うぅ~ッ」と唸ったのである。
肩で「はぁッ、はぁッ。」と息する勇者たちを、東方領主が、
「先程までの威勢は、どうしたんですか?」
「ふふ、ふんッ」
と鼻で笑う。
〝カッチィ~ンッ!〟と頭にきた勇者が、
「そうやって守り続けるしか能がないくせに!」
「閉じ籠もるだけなら“亀”でも出来るわよッ!!」
と、喚き散らす。
これに〝ピクッ〟と反応して、
「今、“亀”って言いましたか??」
「あんな鈍間と一緒にされるだなんて…、とっても不愉快ですッ!!」
と激怒する東方領主が、防御室の外側に魔方陣を展開させた。
「えッ?! ちょ…ッ」
と、勇者がたじろぎ、
「“シールドルーム”を解除しないままで…、そんな事が可能ですの??」
と聖女が目を疑う。
だが実際に、直径4Mで水色の魔法陣が現れている。
次の瞬間、幅15㎝×長さ2Mの[水の矢]が、50本ほど、一斉に、
ズバババババァッ!!
と、放たれた。
その正面にいた者たちが慌てて躱そうとするも、腕や胸に太腿などを、
ズブシュウッ!
と貫かれてしまったのである。
勇者や聖女も含めて―。