第68話 B班の攻防戦・其之弐
自分たちに近づいてくる集団を見ていた[凍氷将軍]が、
「ん? 人間??」
と眉をひそめる。
「ええ、そのようですね。」
と、頷いた東方領主が、
「あれは…、勇者?!」
と驚く。
これに、凍氷将軍が、
「確かに、以前、聞いたことがある容姿と適合するな…。」
「!」
「ということは、“トーキーの魔人”も来ているのか!?」
と、警戒したが、それらしい存在は確認できなかったので、
「連中だけか…。」
「舐めやがって!!」
と怒りをあらわにするのだった。
敵まで約100Mの位置にて、勇者が、
「手筈どおり、いきますよ!!」
と、指揮を執る。
これに合わせて、接近型のメンバーが駆け出した。
その後ろを、遠隔戦タイプの面子が小走りで追う。
敵の将軍が、
「生意気な奴らめッ! 返り討ちにしてくれるわッ!!」
と怒鳴る。
それとほぼ同時に、先頭にいる者たちが二手に分かれた。
魔法剣士/トロール/南方領主は[凍氷将軍]に向かい、勇者/聖女/大将軍/小将軍/二年生書記/ヘルハウンド等が[東方領主]に迫っていく。
東方領主が“銀の杖”で、直径5Mの赤い魔方陣を展開した。
勇者らが、
ズザザザザ―ッ!
と、自身にブレーキを掛けて止まり、即座に対応する。
勇者が黄色い魔方陣を、聖女が白い魔方陣を、それぞれ出現させた。
どちらも直径2Mのようだ。
敵の領主が、幅5Mの火炎を発動させる。
勇者は幅2Mの雷撃を、聖女は幅2Mの【光線】を放った。
聖女のソレは、クレリック系が扱う“光魔法”の強化版だ。
基本的な光魔法は、アンデッドやスケルトンを浄化し、冥界へと旅立たせる代物なので、所謂“不死”以外には効かない。
しかし、聖女の【光線】は“命ある者たち”にも通用するらしい。
いずれにせよ、これらがぶつかり、
ドドッドォ――ンッ!!
と粉砕し合って、宙に煙が生じた。
「どうやら、“加護”を得ているみたいですねぇ。」
「でも、私には勝てませんよ。」
〝ニィ~ッ〟と笑みを浮かべる東方領主に、勇者が、
「どうかしら?」
「勝負の行方なんて、やってみなくちゃ分からないんじゃない?」
と、返す。
更に、聖女が、
「全くもって正しいですわね。」
「今から、それを、私たちで、証明してさしあげましょう。」
と告げたのであった。
魔法剣士やトロールに南方領主が武器を振るい、狙撃手や魔法使いが30Mほど離れた場所から援護している。
敵の将軍が、口から【凍てつく息】を、
ビュオオォォ――ッ!!
と、吐いて、厚み1M×最大幅6M×最長4Mの[山型の氷壁]を作り、物理や魔法での攻撃を防いだ。
右手に中剣を握りしめている魔法剣士が、突き出した左の掌から魔法陣を展開させて、
「邪魔よ!」
と直径2M×長さ3Mの“風の砲撃”を放つ。
これが、[氷の壁]の中心に、
ドガァア―ンッ!!
と当たって、
ボコォオッ!
と、50㎝ぐらいヘコませた。
そこから、四方八方に、
ビキッ!ビキビキッ…、ビキィンッ!!
と亀裂が入る。
脆くなった壁を、左からは南方領主が大剣で、右からはトロールが“棘付きの鉄棍棒”で、
ガシィンッ!
ガシャァンッ!
と、粉々にしていく。
その際に、一気に距離を詰めてきた凍氷将軍が、トロールの腹部を狙って、ジャンプしながら、バトルアックスを右から左へと薙ぎ払った―。