第6話 王都へ
「総勢で何体いる?」
と、誰に聞くともなく聞いてみたところ、紫色のメス鼠が、
『およそ3000かと思われます。主様』
と返答してきた。
「魔物同士で争ったりはしないのか?」
との質問には、鳥型のモンスター(メス)が、
『人間の国で性活している者たちは、皆、生まれ育った魔族の国から追われた者たちにございます。』
『つまりは、弱きゆえに疎外迫害されたり、何かしらの理由でハブられてしまった為に、嫌気が差して地元を離れた者たちが、方々から人間の国へと渡って来たのでございます。』
それに続いて、オスの黒山羊が、
『故に、似たような境遇の者ばかりなので、争いはしません。』
と、締め括った。
「なるほどな。」
と納得していると、
身長4M程で、ガタイの良いミノタウロスが、
『それで、ご主君、これから如何いたしますか?』
と、窺ってきた。
身体も角も真っ白で、戦士みたいな赤色の甲冑を身に纏い、白いマントや、大きな斧も装備している。
ちなみに、マントは、肩当てと一体化しているようだ。
先ほどから全員を【可視化】で見ているのだが、このオスのミノタウロスは、LV.42と表記されていた。
他にも【地撃】と【咆哮】に【念話】のスキルを取得している。
この面子では、こいつが一番強いようだ。
ミノタウロスの左隣には、同じくらいの身長で、でっぷりとした緑色のトロール(オス)が控えている。
赤茶色の麻布で作られた服を着ており、武器は木の大きな棍棒だ。
黒紫の髪は茄子の蔕のようで、かなりのタラコ唇が目立っている。
また、尖った耳と、団子鼻も、特徴的だ。
こいつのレベルは34で、二番目に強い。
先ほどのミノタウロスの問い掛けに、
「そうだな、まずは手始めに、この国の王都を制圧するか。」
と答えると、モンスター達が、
「おおーッ」
と、感動の声を上げた。
更に、あのトロールが、
「すばら…しい…でふ、ごしゅ…くん。」
と喋った。
他の魔物たちとは違って、人間の言葉を直に話せるようだが、知能が低いのだろう、かなりたどたどしい。
しかし、このトロールや、ミノタウロスを始め、半数近くが【進化系】なので、普通に喋れるようになるかもしれない。きっと。おそらく…。
補足として、どの種族も100~200体ほどいるのだが、ミノタウロスとトロールは1体ずつしかいなかった。
多分、人間の国において彼らは希少なのだろう。
それはさて置き、ミノタウロスが、
『直ぐにでも出発しますか?ご主君!』
と、鼻息を荒げる。
(やたらと気合が入ってんなぁ。)
と思ったら、メスの蟻が、
『人族からも被害を被ってきましたので…。』
と説明してくれた。
(なるほど。)
と腑に落ちたものの、
「待てよ、お前ら。俺の許可なく人間どもを攻撃したり捕食するなよ。それだと復讐にならないからな。」
「ただ、向こうから仕掛けてきた際には、徹底的にやり返せ。」
と、命じた。
一同が、
『御意!』
と頭を下げた後に、
『主様…。』
と、メスである蛇の魔物が申し訳なさそうにしている。
幅は50㎝程で、全長は3Mぐらいだろうか、ライトブルーの鱗が印象的だ。
『私どものように、川や池に湖などで生息している者たちは、長時間は地上にいられません。水がないので。』
との説明を受けて、100匹程いそうな蛇たちの周辺を見てみると、
他にも、身長1M前後の半魚人たち(約150匹)や、横幅4Mくらいの黒い蟹たち(およそ200匹)など、水辺に生息している数々のモンスター達が合計で1000ほどいた。
「そうか、分かった。では、お前たちは元いた場所に帰って良い。」
と許可したところ、その者たちが、
『ありがとうございます。』
と、お辞儀して、その場を後にした。
「ん?お前らは帰らなくていいのか?」
と茶色い鱗の蛇たちに聞いてみると、その中にいたオスが、
『我々は地上で生きていけます故。心配は御無用にございます。』
と返事した。
「ふむ…。」
どうやら同じ蛇でも種族によって異なるらしいと解した俺は、
「じゃあ…、行くか!」
と、約2000体の魔物を引き連れて、王都を目指すのだった―。