第57話 小人族
勇者の【瞬間転移】で、皆をトーキーに帰らせた俺は、背中から翼を出して、アイツの所へと向かったのである。
ミノタウロスの国からは、それなりの距離があったのと、途中で大雨に見舞われたこともあり、到着に3日が掛かってしまった。
ま、何はともあれ、約束を守った俺に嬉々とした[ゴブリン女王]と、四六時中ドッキングしまくったのだ。
夕刻――。
トーキー王国に帰還するべく身支度を整えていた俺に、
『宜しいでしょうか? 主様。』
との伝言が入った。
相手は、モンスター達の参謀役である[ジャイアントアント]だ。
『どうした?』
と、訊ねたところ、
『科学開発相談部のリーダーたる“クレリック”が、〝暗礁に乗り上げた〟と申しております。』
と返ってきた。
なんでも…、[魔道機関車]はまだどうにか成るかもしれないものの、[飛行艇]の方は難しいとの事だった。
トーキーという国は内陸部のため、川や湖用といった小型~中型の船ならともかく、大型船舶を造れる職人がいない。というのが理由らしい。
いずれにせよ、「完成できるか否かの確率は、どちらも60~80%である」というのが、[科学開発班]の見解であるとの報告を受けたのだ。
(参ったなぁ。)
と、頭を悩ます俺に、ジャイアントアントが、
『“ドワーフ”を頼られてみては如何でしょうか?』
と提案してきたのである…。
「また会おうぞ、愛しき御方よ。」
と、名残惜しそうにするゴブリンロードに、軽く〝チュッ♡チュッ♡〟とキスされた後に、目的地へと向かう俺だった。
その国は、グーマの北側、かつ、サータの西側に、位置しているらしい。
途中で休憩を挟みながら、到着したのは、翌日のAM9:00頃だった。
俺は、某異世界の[武○国家ドワ○ゴン]を勝手にイメージしていたが、事前情報によれば、こちらは中立国であり、王などはおらず、[国主]が治めているとのことだ。
俺は、中央広場の南西に在る[国立協議館]の門前に降り立った。
白壁で、3階建の、横幅が500Mありそうな、その洋館には、2人の守衛が居た。
どちらも、150㎝に満たないぐらい小柄で、立派な髭を蓄えており、“バイキング”のような装備をしている。
明らかに、[ドワーフ]だ。
俺に気付いた連中が、
「もしかして…、“トーキーの魔人”殿では?」
「おぉ、間違いない。きっとそうだろう。」
と口を開いたので、
「知っているのか? 俺のことを。」
と、いささか驚いたのである。
2人とも〝ニコニコ〟しながら、
「ええ、存じ上げておりますとも。」
「我らドワーフには、“冒険者”として旅回りしている連中や、他国に派遣されている“出稼ぎ組”がおりますからな。」
「そういった面子が帰国した際に、いろいろな国々の話しを、多くの者たちに聞かせてくれますので…。」
「無論、“トーキー王国”のことも。」
と説明したのだった。
黒色を基調としたレディーススーツ(タイトスカート)姿で、身長143㎝くらいの犬型[コボルド]が、要人の元まで案内してくれるそうだ。
種類は“パピヨン”だろうか?
さほど犬に詳しくない俺にはイマイチよく分からない。
先に廊下を歩く彼女によれば、この建物内には、協議会場を始めとして、幾つかの執務室や、ギルドに、各行政の相談窓口が設けられているそうだ。
いずれにせよ、俺は、[国主補佐官]の部屋へと通されたのだった―。