第56話 ミノタウロスの国にて
翌日、グーマ王の妹を、新たに女王に即位させた俺は、魔人妹の【瞬間転移】で、ミノタウロス国の王都へと渡った。
北門にて、軍勢を地元に帰らせ、【絶対服従】を使い、トーキーのメンバーと都を闊歩する。
何度となく戦禍に巻き込まれたのだろう、あちらこちらで修復工事が行われていた。
その家屋は、“牛”ども用のデッカイ物が目立つ。
勿論、小~中型サイズの魔物たちも見受けられた。
うちのミノタウロスに、
「どうだ? 久方ぶりの故郷は?」
と、訊ねたところ、
「…、すみませんが、ご主君。」
「実家に寄っても構いませんでしょうか?」
と窺ってきたので、許可してあげたのだ。
ここの王城は都の中心に在り、彼の実家はその北東に位置していた。
無残にも崩れ落ちたままになっている我が家の前で片膝を着いたミノタウロスが、右の握り拳を額に当てて両目を閉じる。
これが、彼らの、冥福の祈りかたらしい。
[玉座の間]にて、現在の大将軍が待ち受けていた。
レベルは124である。
バトルになるかと思いきや、跪いた彼女が、
「王たちの狼藉を、心より、お詫び申し上げます。」
と、謝罪したのだった。
牛たちの[大将軍]となれば、やはり巨躯なのであろうと勝手に想像していたのだが、その予想はおもいっきり外れたのである。
身長は180㎝で、耳や腕に脚は、ほぼホルスタインで、白い角も小さく、尻尾が生えており、他の部位は人間だった。
ゆるふわ三つ編みの髪も白色で、瞳は茶色く、端正な顔立ちをしている。
ミノタウロスの亜種で、[ホルスタウロス]という名称とのことだ。
その体型は、〝ボン!・ボン!・ボン!〟の、我儘BODYである。
なんでも、もとは【クレリック】だったものの、護身の為に武術を鍛錬していたら、【ハイクレリック】に進化したそうで、それを、先のミノタウロスロード(スライム女王に倒された)に認められ、出世したそうだ。
彼女自身は、あまり争いを好まないので、断ろうかとも考えたが、奴に殺されかねないので、渋々ながらも承知したらしい。
玉座に腰掛けた俺が、このホルスタウロスを、次の王に任命しようとしたが、
「私には向いていません。」
「それよりも、そちらにいらっしゃる、かつての中将軍のご子息が適任かと…。」
と述べた。
しかし、こっちはこっちで、
「いや、我は、一度、逃げた身ゆえ、そのような輩が頂点に君臨したとて、この国の者たちは納得しないでしょう。」
「それに、まだまだ、ご主君の側で精進しとうございますし。」
と、断ったのである。
(う~む、困った。)
(強さからして、この大将軍が相応しいんだが、服従が効かないし…。)
(ん? 待てよ。こいつ、メスだよな。)
(だったら!)
と閃いた俺は、
「お前と二人っきりで、話しがあるんだが…。」
と、持ち掛けて、ホルスタウロスの自室で結合した。
その効果があって、ホルスタウロスは、その日のうちに、戴冠式を行ったのである。
めでたし、めでたし―。