第47話 思いがけない来客
それは、休暇に入ってから四日目の朝のことである。
城の庭にて、守兵たちが騒いでいたので、窓から覗いてみたところ、大きな鴉型のモンスターがそこに居た。
変わったことに、頭が二つある。
その頭から尾までの長さは5Mといったとろだろう。
体毛は黒と紫が入り混じったような色合いで、瞳は赤い。
どちらにも首輪が嵌められており、手綱が見受けられた。
その背には、“鞍”があるのだが、どうやら椅子が付属しているようだ。
「繰り返す! 何者だ?! 答えよ!!」
「怪しい奴め! そこから降りてこい!!」
と怒鳴る兵士たちの視線の先には…、あの[ゴブリン女王]の姿があった。
翼を出現させて、外に向かった俺は、
「待て! そいつは、ゴブリンロードだ。」
「皆は下がっていろ。」
と、命じる。
俺を認識するなり、
「お前様! 一体、何をやっておったんじゃッ!?」
と怒りを顕わにするロードに、
「え? ナニって??」
と、首を傾げたら、
「惚けおってぇ~ッ!」
「妾の所へまた来ると約束したにも関わらず、ほったらかしにしおってぃッ!」
〝ギリギリィッ!〟と歯軋りした。
更には、
「もしや、他の女子どもに現を抜かしておったんじゃなかろうのぉ~ッ?」
と左腰に帯びている剣の柄を、右手で掴んだ。
(やばいッ!)
(ただでさえ俺より強いうえに、あの“火炎の剣”は大惨事になり兼ねねぇッ!)
と、焦った俺が、
「いや、いろいろと忙しかったんだ!」
「話せば分かるから、落ち着けよ。な?!」
と宥めたところ、
「……良かろう。聞いてやろうではないか。」
「ただし、納得いかんかった時には…、のう?」
〝二ィ~ッ〟と不敵な笑みを浮かべるのだった。
俺の部屋にて、彼女が紅茶を飲みながら、
「成程。“ゴーレムのダンジョン”に“スライムの国”のぉ…。」
「ふむ。いろんな女と遊んでおったわけではなさそうじゃな。」
と機嫌を直す。
「あ、当ったり前だろぉ~。」
と、取り繕う俺は、内心、冷や汗を掻いていた。
実際は、別の女性たちとも愉しんでいたからだ。
そんなことは露知らず、ゴブリンロードが、
「して、その“すぽぉーつ”とは何じゃ?」
「妾も、観に行ってよいのか?」
と窺ってきたので、
「構わねぇけど…。」
「お前、自国を留守にしててもいいのか?」
と、訊ねたら、
「2~3日ぐらいは、大丈夫じゃ!」
「無論、ここに泊っていくぞ!!」
と返されてしまった…。
ちなみに、[双頭の鴉]には、客室をあてがってやった。
そこからは、女子ソフトボール/女子ラクロス/男子バスケットボール/男子バレーボールを見て回ったのだが、いちいち目を輝かせては、
「おお~ッ! なんじゃ今のは?!」
「むむッ? 凄いのぉッ!!」
と、興奮していた。
ま、こいつが一番ハッスルしたのは、夜なのだが…。
そんなこんなで、ゴブリン女王こと[絶倫クィーン]は、2日後に帰国した。
期間中、アーティファクトである[炎の剣]を見せてもらった賢者と魔人姉妹に、
「これはまた、素晴らしいですなぁ。」
「ええ、初めて拝しましたが、これほどまでとは…、感動ものです。」
「まさに、ロードに相応しい逸品だと言えますね。」
など、あれこれと褒めちぎられた事もあって、かなり満足そうに―。