第40話 会話は続くよどこまでも
ミノタウロスと、ジャイアントアントに、
「お前たちは知っていたのか?」
と、聞いてみたところ、
「ロードがメタル系だというのは存じておりましたが、詳細までは…。」
とミノタウロスが首を横に振り、
「私もです。」
と、ジャイアントアントが首肯した。
「ふむ……、いろいろと分からない事もあるから、一度まとめさせてもらえるか?」
と西方領主に訊ねてみたら、
「勿論でございます、主様。」
「私の知る範囲内であれば、何なりと。」
と、お辞儀した。
「まず…、お前たちは細胞分裂して数を増やしているんだろ?」
「なのに、メタル系が10体ほどしか存在していないのは何故だ??」
「それは、亜種のなかでも〝稀〟に誕生するからでございます。」
「スライムは、私のような水色を基本とし、そこから、紫色の“ポイズンスライム”に、黄色の“コンフュージョンスライム”や、赤色の“パラライズスライム”といった亜種が、定期的に派生しますが、“メタル”は数百年に一度だけ出現します。」
「つまり、メタルは不確定要素であり、いつ生を受けるかは謎ということか?」
「左様でございます。」
「んんー…。」
「なぁ?」
「はい?」
「例えば、LV.102のお前から分裂したスライムも、お前と同じレベルなのか?」
「いいえ、全てのスライムがLV.1からになります。」
「……、要は、“分身”ではなく、“子孫”ということか?」
「ありとあらゆる生命体が、赤ん坊から始まるように。」
「はい。」
「その解釈で間違いございません。」
ちなみに、LV.1~LV.49までのスライムたちは、ドラ○エの“バブルスライム”や“はぐれメタル”みたいなフォルムをしているのだが、目や口などは付属していない。
転生したばかりの[リ○ル=テン○スト]が何も見えずとも察知していたように、この世界におけるLV.49以下のスライムたちも、センサーのようなものが働き、周囲を把握しているみたいだ。
LV.50以上の者たちが、それぞれ人間の男性と女性の姿に分類されているのは〝好みの違いによるもの〟らしい。
「ふーむ…、なるほど。」
「お前たちの生態はそれなりに理解できてき…、あッ!そうだ。」
「〝スライムロードに、咆哮や絶対服従が効かない〟というのは、ゴーレムみたないなものなのか?」
と俺は、[ゴーレムのダンジョン]での出来事を回想した。
[金のゴーレム]を攻略できずにいたので、【咆哮】と【絶対服従】を試してみたのだが、通用しなかったのだ。
[“土”と“岩”のヤ―ツ]にも使ってみたが、こちらも無駄だった。
「私はゴーレムを見たことはありませんが、伝え聞く話によりますと…。」
「なんでも、ゴーレムには“思考”がないため、支配系のスキルは意味を成さないのだそうです。」
「スライムロードたちメタル系も、ほぼほぼ思考を持ち合わせておりません。」
「なので、主様の“咆哮”や“絶対服従”が効いたとしても、ほんの数秒~数十秒でしょう。」
と、西方領主のスライムが口を開いた。
確かに、ゴーレムには操られている感がある。
予めプログラミングされているかのように。
トーキーの大将軍が、
「主様のスキルで、ロードの動きを停止させているうちに総攻撃すれば倒せるのでは?」
と疑問を呈したところ、LV.102のスライムが、
「先程も述べたように、ロードの防御力は“桁違い”なので。」
「そうですね…、優に5000は超えているようです。」
と、返してきた。
これには、その場に居合わせた全員が、
「ごせ…!」
と、絶句する。
無理もない。今現在LV.108の俺ですら防御力が540なのだから。
しかも、[旧魔王]と同化しているので、これでも他者の倍以上の数値だ。
ついでに、攻撃力は864である。
重苦しい空気が流れたので、
「お前たちは、何故に、バラーキ王国へ攻め込んできた?」
と俺が話題を変えてみたら、
「私どもは、ここ数年衝突を繰り返してきた北の〝オークの国〟との和睦が成立したのですが…、〝いつ反故にされるか分からないので、その時に備えて版図を拡げておこう〟と、二将軍がロードに提言したからでございます。」
「スライムロードが理解できているかは疑わしいところですが…。」
と、答えた。
「ん? モンスター同士でも領土争いするのか??」
と質問してみたところ、
「魔族は、人族よりも、より弱肉強食ですので…、〝一つにまとまったのは旧魔王様の時のみ〟だそうでございます。」
「新たな魔王様の元で、再び一枚岩になる可能性はありますが…、主様が出現なされましたので、今後どうなっていくかまでは、私には測り兼ねません。」
と、言い表した。
冒険者だった【魔法剣士】が、
「“魔物の国”は何処も似たようなものでして…、対立していたり、不戦協定を結んだり、といった状況でございます。」
「ロードによっては、私利私欲のためや、自らが魔王に成らんとす野心がために、侵略戦争を仕掛けている模様です。」
「それもこれも、モンスター達の頂点に君臨する者がいなかったのが原因のようですが…、ここから先は、この時代の魔王次第で次の局面へと進むことでしょう。」
と補足した―。