第39話 この世界のスライムたち
あれから2週間…、バラーキの最東端に在る砦に、軍勢が集結していた。
野営地に、ひときわ大きなテント(ゲル)が用意され、主だった者たちが軍議を開いている。
その面子は、バラーキの王子2人/バラーキの大将軍/バラーキの砦の指揮官および副官/聖女/勇者/魔法剣士/トーキーの各将軍/ミノタウロス/ジャイアントアント/LV.102のスライムだ。
この異世界におけるスライムたちの[擬態化]は、俺とかが知っている“リ○ル=テン○スト”とは少なからず違った。
〝人間のフォルムを模しているだけ〟であって、〝人間と瓜二つではない〟のだ。
順を追って説明していくと…、髪の毛・顔立ち・身体付きは、人型ではあるものの、色はスライムそのものである。
例えば、水色のスライムであれば〝人の姿であっても水色のまま〟だし、紫色は紫色の
ままで、黄色は黄色の…、といった感じだ。
おそらく、リ○ルは、[シ○さん]こと“井○静江”を捕食したことによって、〝人間らしい肌〟を再現できたのだろう。
[スキル:○者および大○者]の分析もあって。
だが、こちらのスライムたちは“光合成”で生きており、人や動物に植物などを喰らうことがない。
[捕食]のスキルもないし。
また、ドラ○エの“モ○ャス”のような魔法もないので、完コピは不可能なようだ。
そのため、衣服を着用していない。
「ただ単純に、生き物たちのなかで最も動きやすそうな人間の姿形を真似しているだけでしかない」との事だった。
基本的には素っ裸で、男性バージョンと女性バージョンがある。
しかし、どちらにも乳首や生殖器はない。
スライムたちは年に一度“細胞分裂”して、増殖していくそうだ。
LV.50~99は中学生ぐらいの見た目で、LV.100以上は20前後といった印象である。
眼球の白い部分は黒く、瞳は黄色で、爬虫類みたいな鋭い目が、連中の共通点だ。
[ゴブリンの国]での教訓を活かして、レベルが80に達していない者たちは帰らせようかとも思ったが、バラーキ王国は「犠牲者の弔い合戦を行わなければ、遺族に顔向けできません」と主張し、トーキー側は「同盟国として最後まで支援せねば、面目丸つぶれになってしまいます」と述べた。
当然、勇者一行に魔物たちも、俺に同道する心づもりだ。
ま、ミノタウロスとの〝例の一件〟もあるから、断る訳にもいかない。
何はともあれ、LV.102のスライムに、「スライムロードのレベル」や「将軍たちは居るのか」と訊ねてみたところ、
「ロードはLV.51で、レベル110の左将軍と、レベル108である右将軍の、二体がおります。」
と、淡々と答えた。
[スライムの国]の西方領主である彼女は、身長170㎝前後で、スレンダーかつデカ乳デカ尻である。
ゆるふわの髪は背中あたりまでの長さで、癒し系の顔立ちではあるものの、スライムたちは無表情のため、喜怒哀楽は読み取れない。
「51? ロードなのに??」
と驚く俺に、
「はい。レベルは私などよりも低うございますが…、恐れながら、主様でも敗北を喫すかと…。」
と返す。
これにトーキーの人間たちが激昂しそうになったが、押しとどめて、続きを聞く。
「HPも低く、MPは0で、攻撃力は400相当ですが、防御力が桁違いでございます。」
と、言う[西方領主]に、
「どんな奴なんだ?」
と質問しみたら、
「この世に10体ほどしかいないとされている“メタル系”でございます。」
「なかでもロードは“随一のメタルスライム”と評されております。」
との話だった。
「勝てる確率は?」
と、窺ってみたところ、
「“咆哮”や“絶対服従”も通用しないかと推測されますので、容易には倒せないでしょう。」
「最悪、全滅を覚悟したがよろしいかと…。」
と告げるのだった―。