第36話 魔物たちの進化
およそ2400の人間とモンスターを、40で1グループに分けた。
混合なので、“40人”と言うべきか、“40体”とするべきか、悩みどころではあるが…、ま、深く考えないでおこう。
いずれにせよ、それぞれのレベルを鑑みてバランスを取ってある。
かくして、約60のグループが、1時間おきにダンジョンへ潜っていく運びとなったのだが、やはりB2止まりになってしまい、どの班もB3を突破できずにいた。
ただ、1日目、3日目、5日目…、と挑戦を続けた甲斐もあって、全体的にレベルがアップした。
ま、俺は上がらなかったが…。
それは、連中がここに来て2週間が経とうとした頃に起きた。
そう、[進化]した者たちがいたのだ。
進化系モンスターがLV.50になると全身が白く眩しく光って、その後、何かしらが以前と異なっていた。
ミノタウロスは、身長4Mだったのが5Mになった。
ちなみに、現在のレベルは64だ。
トロールも、5Mほどの身長となり、少なからず体付きが変わった。
それまでは、ただ単に太っていただけなのだが、進化後には〝筋肉質なタイプのお相撲さん〟みたいになり、団子鼻やタラコ唇ではなくなって、凛々しい顔立ちになっているし、肩あたりまで伸びた髪の毛もオールバックになっていた。
しかも、喋り方が流暢になったので、いろいろとビックリだ。
そんな彼のレベルは56である。
この二体に関して不思議だったのは、着用している甲冑や衣服も同時に大きくなっていた点だ。
まるで、サ○ヤ人の王子であるベ○ータが巨大猿になった時に、戦闘ジャ○ットが一緒にデカくなったように…。
理屈は分からんが、この世界における魔法の力によるものだろう。
多分、きっと…。
話が逸れたので元に戻そう!
他にもLV.50を突破して容姿が変化した者たちがいる。
例えば、“黒い犬”は、身長170㎝前後の、人間のような見た目になった。
とは言え、全身は黒く、腕や脚には犬の毛が生えており、手や足も獣のようだ。
更には、頭に犬の耳が、尾骶骨からは犬の尻尾が生えている。
どうやら、[ヘルハウンド]というタイプになったらしい。
蛇たちは、幅50㎝×全長3Mぐらいだったのが、共に倍増している。
オスの方はまんま蛇だったが、メスは一部が人間の女性になっていた。
頭から股間あたりにかけて。
これを[ラミア]と呼称するらしい。
性別問わず素っ裸になった魔物たちには、遺跡の部屋にある布カーテンを衣服代わりにしてあげた。
テル○エ・ロ○エの、古代ローマ人のように。
山羊のなかにも、人みたいになった者たちがいた。
黒髪は“黒山羊”で、白い髪は“白山羊”だ。
どちらも頭に“山羊の角”が生えたままになっている。
なんでも、[ワーゴート]というらしい。
蟻たちは、身体が一回り大きくなっている。
上半身は人型だが、下半身は蟻のままだ。
また、その上半身は騎士の鎧を彷彿とさせる甲殻で覆われている。
オスは、片手に槍を、反対側の手には盾を装備しており、この盾は上部が水平で下に行くにつれて鋭く尖っていた。
メスの方は、割と長い剣に、円形の盾を持っている。
全身は元より、武器と盾も、黒色と紫色が入り混じった感じになっていた。
そんな彼らは、[ジャイアントアント]という名称との事だ。
それ以外にも、[アラクネ]や[ハーピー]などが見受けられる。
これらの進化した者たちは、誰もが等しく直で話せるようになっていた。
人間たちの方は…、魔法剣士がLV.90となり、大将軍がLV.52で、中将軍はLV.45となっており、小将軍が41だ。
他の連中も、それぞれに10程レベルUPしている。
チート級の勇者はLV.38になっていて、それに匹敵する存在の聖女がLV.32になっていた。
「ふふふふふッ。」
「すぐにでも勇者さんを追い越せそうですねぇ。」
と発言した聖女に、
「ほほほほほッ。」
「大口を叩くのは、私に追い付いてからにしてほしいですねッ。」
と、勇者が返す。
微笑みながらも睨み合う二人の背景に、稲光が見えたのは俺だけだろうか…?
さてはて、改めて地下3階を攻略しようと息巻いたところに、
『主様、今よろしいでしょうか? 私は“チヨーダ森林”の川に生息している者ですが…、エドゥ王都より使いの人間が来ておりまして、〝ご主君に急ぎ指示して戴きたい用向きがある〟と申しております。』
との【念話】が入った―。