第342話 最後の戦い・其之漆
北方にて――。
装飾が施された“長槍”を右手に握っているのは、[オーディン]だ。
その武器は“グングニル”という名称である。
地球における古ノルド語で“揺れ動くもの”という意味なのだそうだ。
性質については、詩語法に〝その槍は正しい場所にとまったままでいない〟と記されているらしい。
これは〝決して的を外さない〟と〝敵を貫いた後に自動的に手元に戻る〟といった二通りの解釈があるとのことだ。
さて…。
オーディンと対峙しているのは、[女魔王/半天馬の女王/ウェンディゴ女王/猿の女王/狐の王]であった。
なお、[ダークロード]と[ペガサスロード]は宙に浮いている。
とにもかくにも。
五者が攻撃の機会を窺うなか、オーディンが“左の掌”を〝スッ〟と突きだして、[三つの魔法陣]を構築した。
そう、[パズズ]や[ロキ]よりも一つ多い。
おそらく、オーディンは、三将軍の“リーダー格”なのだろう。
ちなみに、これら“直径8Mの魔法陣”は、トライアングルを形成する配置となっている。
そして、[北の総大将]たるオーディンが、上から“五千本ぐらいの雷”を、左下より“魔法陣と同規模の炎”を、右下からは“最大直径8M×長さ15Mあたりで歪なクリスタル系の氷”を、一斉に放った。
これに、危険を察していた五者が対応する。
[女魔王]は、左手より“直径2Mの魔法陣”を展開して【ピンク色のビーム】を飛ばし、幾らかの雷と相殺させた。
[ペガサスロード]は急上昇して躱す。
[ウェンディゴ女王]は、口から“吹雪みたいな息”を吐いて、火炎の一部を凍らせる。
[モンキーロード]は【残影】で炎を回避した。
[狐の王]は、咄嗟に伏せて、氷から逃れる。
天と地では、やはり、敵味方問わず犠牲者が少なからず出たみたいだ。
そうした状況で、各ロードが態勢を整え直していく。
ひと呼吸おいて、総大将が“グングニル”を[女魔王]へと投げた。
かなりの速度ではあるが、[ダークロード]は左に体を捻って免れる。
このまま通過していった“槍”ではあったが、〝ピタッ〟と止まった次の瞬間、〝グルン〟と後転するなり、改めて[女魔王]に〝ビュオッ!!〟と飛行した。
それに気付いた[ダークロード]は、
「むおッ?!」
驚きながら“永夢の鎌”を下から振るう。
〝ガキィン!!〟と上に払われた“グングニル”が、オーディンのもとへ縦向きのままで〝スゥ――ッ〟と帰ってゆく。
こうした様子を目の当たりにしつつ、
「なんとも厄介な武器よのぉ。」
[女魔王]が〝ぬぅ~ッ〟と眉間にシワを寄せた。
総大将が“槍の柄”を右手で〝パシッ〟と掴むなか、
「あの敵を倒すには、空と陸で波状攻撃を仕掛けるのが最適でしょう。」
[ペガサスロード]が[女魔王]に声をかける。
〝うむ〟と頷いた[ダークロード]は、
「必ずや滅してくれようぞ!!」
こう宣言するのだった―。




