第34話 計算外
人型ゴーレムの身長は4Mといったところで、ダンジョンの天井の高さは6M程だろう。
他にも同じ大きさの、狸型/猪型/闘牛型/鰐型が見受けられる。
10体1組で行動しているらしく、正面からと右方からの合流で、計20体となった。
【可視化】にて、全員がLV.20相当であることが分かった。
1体の“狸ゴーレム”が飛び掛かってきたので、柄は1.2Mで刃渡りが80㎝の槍で薙ぎ払う。
土なだけに、いとも容易く、
ドッゴオオォォンッ!!
と粉砕できた。
そこからは、1体ずつ攻撃してきたので、槍を縦に振るったり、突いたりして、破壊していった。
ダンジョン内を、右に曲がったり、左に曲がったり、真っ直ぐ進んだりと、次の階段を目指して行く。
時に挟み撃ちにされることもあったが、連中の知能は低すぎるが故に、連携プレーというものがない。
いや、そもそも知能を有しているのだろうか?
なにはともあれ、割と楽勝だった。
B2へ続く階段の前には50体のゴーレムが待ち構えていた。
いかにも、「ここから先は通さんぞ!」といった感じで。
1体ずつ相手するのも面倒だったので、下向きにした左手を突き出し、そいつらの足元に直径50Mの魔法陣を展開させ、
「土くれは、土に還れ。」
と、かつての[ゴブリンシャーマン]のように、床を幾つにも隆起させたら、
ドゴォンッ!ズガァンッ!
とゴーレムたちが砂に化した。
地下2階は、LV.30相当である[岩のゴーレム]のエリアだった。
今度は“バトルアックス”を取り出して、野球のバッターのようにフルスイングしていく。
柄は1.2Mあり、刃は短い部分が20㎝で長い部分は40㎝の幅が25㎝だ。
その刃には、なかなかこだわった装飾が施されている。
こいつらも1個体でしか仕掛けてこなかったので、楽にB3への階段まで来たのだが、やはり50体ほどが待ち伏せていた。
戦斧をアイテムBOXに収納した俺は、両の掌を突き出して、直径5Mの魔法陣を出現させ、
「打ち砕かれて、消え失せよ。」
と、何百本もの、長さ5Mの“風の矢”を放つ。
頭・腕・胴体・脚を〝ズバンッ!ズドンッ!〟と射抜かれたゴーレムたちが、粉々になった。
(んー、大したことないなぁ。)
(こりゃ、レベルアップは期待できそうにないぞ。)
と思いながら階段を下りた俺は、その甘い考えを改めさせられる破目になった…。
暫く歩いたら、LV.50相当の[金のゴーレム]が5体1組で登場した。
(一気にレベルが高くなったみたいだが、まぁ、相手にならねぇなッ。)
と、なめてかかった俺に、5体が一斉に襲ってきた。
(連携できんのか?!)
と少なからず慌てながらも、“炎の魔法”を発動させて、
ゴオオオオォォォォッ!
と、焼き払った。
筈なのに?
ある程度〝ドロォッ〟と全身が溶けているだけで、あまり効いてなさそうだ。
しかも、動きを止めようとしない。
(!)
(補助魔法で強化されてる?!)
と判断し、再び別の魔法を試そうとしたところで、こいつらの後方にある左の曲がり角から新たな5体が、更には直線上の奥からも別の5体が現れた。
(これはヤバい!)
と、判断した俺は、翼を出して宙に浮き、後ろ向きで退却する。
案の定、ダッシュで追いかけてきやがった。
もし、背を向けていたら確実にダメージを与えられていただろう。
某・背中に[一切の“逃げ傷”なし!!!]の、白くてデカい髭を生やした海賊船長みたいに、誇り高くありたいしな。
男なら!!
そんな俺は、今――。
おもいっきり逃げてんだけどねぇ~ッ!
階段横の魔法陣に着地したのと同時に、人型の拳が俺の顔に迫ってきたが、間一髪、その場から〝フッ〟と転送された。
どうやら、遺跡の1階にある広間に移動したようだ。
ここの床にも魔法陣が描かれているので、各層と繋がっていることが推測できた。
(あっぶねぇ~ッ!!)
と焦りを隠し切れない俺は、
(魔法剣士のやつ、よくあれをクリアー出来たな。)
と、感心したが、
(いや、〝B3までしか行けなかった〟と言ってたんだっけ?)
(ま、あいつらは手強いわなぁー。)
と1人で納得した。
取り敢えず、腹が減ったので飯にしつつ、攻略を思案する俺だったが、これといった打開策は浮かばなかった―。