第333話 荒野にて・急
イフリートが扱うのは[グレイブ]だ。
これは、槍の穂先を剣状にしたような武器である。
日本で言うところの“薙刀”みたいな物だ。
その“ミスリル製”に違いないグレイブには、何やら文様が刻まれている。
こうした[ポールウェポン]を、イフリートが振り下ろす。
ロングソードを真横にして受け止めた[魔人の女王]ではあったが、力負けしてしまい、若干ぐらつきながら後退る。
その間に、イフリートが、“左の掌”より、直径6Mはありそうな“マジックサークル”を構築した。
この流れで、敵は、魔法陣と同じ規模の【火炎】を放つ。
咄嗟にソードを突き出した[魔人ロード]によって、最大直径6Mの【風の渦】が飛んでゆく。
無論、それは、【伝導】によるものだ。
ただ、残念ながら、女王の【風】は、イフリートの【焔】に押され、掻き消されてしまう。
迫る猛炎を回避すべく、機転を利かせた[魔人ロード]が、身体を元のサイズに戻す。
これによって、女王の頭上を【炎】が通過していった。
ひと呼吸置き、魔人ロードが再び“巨大化”する。
そこへ、
「破壊。」
イフリートが[グレイブ]を払う。
対応が遅れた女王は、左腹部に直撃されてしまい、鎧に亀裂が生じた。
「ぐふッ!」
膝を屈しそうになった[魔人ロード]ではあったが、どうにか踏みとどまる。
剣士の【一点集中】を使おうとイフリートが態勢を整えた。
「いって」と言いかけたイフリートの右腰が〝ボォオンッ!!〟と爆ぜる。
「む?!」
イフリートが確認したところ、視線の先には[エルフの国主]が佇んでいた。
どうやら、【伝導】を用いたらしい。
「死に急ぐか…。」
「よかろう。」
「お前から殺してやる。」
[森人族の長]へと狙いを変えたイフリートに、長さ50㎝×幅1㎝といった“針のような水”が、雨の如く降り注ぐ。
まともに浴びたイフリートは、負傷するのと共に、
「ぬッぐ??」
動けなくなってしまった。
これは、イフリートの左側より[魔人妹]が発動した【痺水】による効果だった。
その側にいる[魔人姉]が、
「氷風!!」
“冷気の竜巻”を起こす。
モロに巻き込まれたイフリートは、上昇しながら凍り付き、背中から地面に叩き付けられる。
この衝撃によって、全身を覆っていた氷が砕けた。
「おのれ……。」
ふらつきながら立ち上がったイフリートが、
「奇妙な魔法を扱いおって!」
魔人姉妹を睨み付ける。
そうしたタイミングで、
「破壊!!」
イフリートの右脛へと、[バトルアックス]を横に振るったのは、[ドワーフの国主]だ。
[小人族の長]に、
「次々と鬱陶しいわッ!」
イフリートが怒りを露わにする。
完全に気を取られた敵へ、
「地乱!!」
魔人妹が、大小さまざまな“岩石”を左下半身にヒットさせ、ダメージを与えるのと同時に混乱させた。
更に、
「毒爆!」
魔人姉によって、左脚を爆破されたイフリートは、
「がはッ?!!」
「ごほッ! ごほッ! げほッ!!」
吐血しながら、地に右膝を着く。
少なからず意識が朦朧としているらしいイフリートの正面に近づき、
「乱れ打ち!」
“剣士のスキル”を繰り出す[魔人の女王]であった―。




