第33話 ゴーレムのダンジョン
「ゴーレムどもは1時間で復活するそうだが、どう思う?」
と、賢者に聞いてみたら、
「ふぅ~~っむうぅッ。」
と唸りながら、右手で自身の顎髭を擦り、
「そうですなぁ。」
「これは、あくまで、私の仮説ですが、遺跡かダンジョンに、何かしらの仕掛けが施されているかと…。」
との見解を示したので、
「やはり、最下層が怪しいか?」
と、更に質問してみたところ、
「はい。」
「そこの剣士殿によると、下の層へ行けば行くほど、ゴーレムが強くなっていったそうですからな…。」
「十中八九、間違いないでしょう。」
と肯定した。
「そっか…。」
と、頷いた俺は、
「もし…、もしも…、仮にだぞ?」
「ゴーレムを復活させる為のアイテムが、どこかしらに安置されているとして、だ。」
「それを用いれば、亡くなった者たちを生き返らせることは可能か?」
と少なからず期待を寄せる。
それに対して賢者が、
「んん~…。」
「これまた判断が難しゅうございますなぁ…。」
「おそらくは、アーティファクトのように“失われし古代魔法”を使っているかと推測できますので…。」
「古代魔法に関しては、私も、全体の3割ほどしか解明できておりませんし…。」
「ですが、そのような代物が在るのであれば、個人的にも調べてみとうございます。」
と、述べた。
なぜ、[失われし古代魔法]なのか?
それは、「利用者の寿命を著しく縮めるため危険視され、記録の多くが抹消されてしまったうえに、口伝も残されていないから」だそうだ。
勇者たちと各将軍に魔物どもを城の庭園に集め、改めて魔法剣士を紹介してから、ダンジョンのことを皆に教えると、予想していた通り、全員が「自分たちも行きたい!」と、鼻息を荒げた。
ターカウォ山までは、歩いて2週間かかる。
ダンジョンには、できれば1ヶ月は滞在したい。
との理由で、保存食の準備を料理人たちに命じた。
ただ、空を飛べる俺であれば、全速力で5~6時間もあれば到着できるため、10日後に、1人で先に赴くことにした。
他のメンバーは、その翌日に、魔法剣士の案内で山を目指すことになっている。
標高3000M程のターカウォ山が見えてきた。
なかなかに険しそうな全貌をしている。
頂上には、3階建ての大仰な遺跡が存在感を放っていたが、風化によって所々ボロボロになっており、あちらこちらに苔が生えていた。
魔法剣士が言っていたように、内部には、かなりの数の部屋や、食堂と、会議室が、設けられていた。
各部屋は4~5畳くらいの狭さだ。
賢者の推測によれば、「魔導士やドワーフにエルフが、まずは自分たちの為の住処を作ったのだろう」とのことだった。
また、「ドワーフの技術に、古代魔法を併用すれば、ほんの1週間で遺跡は完成したのではないか?」「ダンジョンやゴーレムを含めても、2ヶ月ぐらいで全てを整えられたかもしれない」とも発言していた。
鎧一式を装備した俺はB1へと進んでいく。
階段は、50人が横一列になれるくらい幅広い。
下りきった階段の左隣に目をやると、床に大きな魔方陣が描かれていた。
間違いなく転送用だろう。
通路は、100人分の幅がある。
俺の知っているRPGよりもスケールがデカい。
「アメリカサイズかよ!」
と一人ツッコミしていたところに、“土のゴーレム”たちが現れた。
通路は直線になっており、どこまで続いているのかは見えなかったが、ダンジョンらしく途中で右に曲がれるようにもなっているみたいだ。
いずれにせよ、侵入者の気配を察知したのか、前方と右方から、ゴーレムたちがお出でなさった。
俺が王城を出発する前に、賢者が、
「ゴーレムは“旧魔王”を倒すために生産されたのであれば、ダンジョンに足を踏み入れた者たちを排除しようとするのは合点がいかない。」
「他の目的で造られたのやも?」
と、疑問を呈していたのだが…、確かにコイツラが襲ってくる動機が分からん。
何はともあれ、戦闘は避けられそうにないので、ブッ倒すしかない。
俺は、この数日で新たに購入しておいた幾つかの武器から槍を選び、アイテムBOXから引っ張り出した―。