第31話 挑戦的な冒険者
昼食を終えた俺は、窓の外を眺めながら、フルーティーな細葉巻を味わうと共に、
(なんか、こう、さくさくっとレベルアップできる方法ねぇかなぁ~。)
(ゴブリン女王はメスだったから〝チャーム〟が効いたけど、オスのロード達には通用しないだろうし…。)
(もし、また今度、遠征があったなら、モンスター達や、勇者一行に、将軍らも連れて行かねぇとウッセェだろうしなぁ。あいつら、俺の留守中にも鍛錬して、それぞれに3~5くらいレベルが上がってたけども、そろそろ限界っぽいし。)
(勇者あたりは、LV.18になっていたけれど、完全に伸び悩んでるしな…。某〝精神と○の部屋〟とまではいかなくとも、そういう不思議な場所?ダンジョン?みたいなのが存在していると喜ばしいんだが…。)
と、漠然かつダラダラと思案しているところへ、王の使いが来て、
「失礼します。ご主君に謁見を求めている旅の者がおります。」
と告げたのだ。
「ん? 冒険者か?」
「はい。」
「どんな?」
「なんでも、20代前半の女性らしく…、守兵の1人が〝事前に、ご主君と約束していないのなら、会わせられない〟と追い返そうとしたら、一撃で倒されてしまい…、それをお聞きになった大将軍閣下が現場に駆け付けて、取り押さえようとしたところ、数秒後には敗北を喫していたそうでございます。」
「なに?! 大将軍が、か?」
「はい。」
(レベル40過ぎの大将軍が打ち負かされるとは…、相当の手練れだな。)
と、思いつつ、
「そいつは今どこに?」
と聞いてみたら、
「王陛下が〝ご主君に、お伺いするから〟と、第五之客間で待たせておいでです。」
と、返えってきたので、国王を脳裏に浮かべ、
(あいつ、こっちに丸投げしやがったな。)
と苦い顔をした俺だったが、
(ま、大将軍が勝てないのであれば、仕方ないか…。)
と、考え直し、
「分かった。その者を〝玉座の間〟に通しておけ。」
と命じたのだった。
およそ5分後に、玉座の間に足を運ぶと、身長167~168㎝ぐらいの女が、赤絨毯の上で、両手を腰に当てて待っていた。
ショートカットの髪や瞳は黒く、しなやかなカラダ付きをしており、体育会系美女といったルックスだ。
白いワイシャツと、茶色のパンツに、黒のブーツとベルトで、年季が入った感じの銀色の軽めな鎧を装備している。
中剣の鞘はダークブラウンで、鍔は金色、柄は黒いが、全体的に金の装飾が施されているようだ。
絨毯の左右には、王を始めとして、宰相や、各将軍が並んでいた。
俺の姿を見たトーキーの要人たちが跪くも、冒険者だけは平伏しなかったので、国王が、
「これ、無礼であるぞ!」
と、諌めた。
「良い、捨て置け。」
と言いながら玉座に腰掛けた俺が〝ニヤニヤ〟しつつ、
「負かされたらしいな、大将軍よ。」
と、声を掛けたら、
「面目ございません。」
と〝悔しいやら情けないやら〟といった感じで頭を下げる。
想像していたよりは元気そうなので、〝ポーション〟か〝ヒール〟で回復したのだろう。
「さて…、お前は何者だ?」
と、冒険者に質問を投げかけたところ、
「まずは、こちらで語らせてもらおう。」
と抜剣した。
これには将軍たちが、
「こ奴ッ!」
「図に乗りおってッ!!」
「許さんぞッ!」
と、飛び掛かりそうになるも、
「構わん。」
と静めた俺は、椅子から立ち上がって、アイテムBOXから引っ張り出した新品の剣を腰の左に収めつつ、【可視化】を使う。
(LV.88だと?!人間でこの強さとは…?)
(しかも〝魔法剣士〟って?? 初めて見るジョブだな。)
と、疑問だらけになったが、剣を抜きながら台座を下りて、余裕の表情を浮かべ、
「かかってこい。」
と指を上向きにした左手で〝クイッ クイッ〟と招いた。
それが癇に障ったのだろう、
「このッ!」
と、襲い掛かってきて、上から、下から、右から、左から、斜めから、剣を振るう。
ガキンッ!キィンッ!ガシャッ!ガシンッ!
と全ての攻撃を受け止めつつ、
「ふむ。なかなかいい太刀筋だ。」
と、褒めたところ、火に油を注いだらしく、
「舐めるなッ!」
と左の掌に直径50㎝の青い魔方陣を出現さて、俺の右脇腹に照準を合わせてきた。
次の瞬間、魔方陣と同じ大きさの〝氷の筋〟を発動させたが、左から右へと剣を薙ぎ払った俺によって、
ズガアァンッ!
と、粉砕される。
「なッ!?」
と驚く魔法剣士に、
「次は、こっちからいくぞ。」
と、剣を縦横無尽に叩き付けていく。
「ぐッ!」
「くぅッ!」
と防戦一方になった魔法剣士が、徐々に徐々に、確実に、後退りする。
(まぁ、こんなもんだろう。)
と、見定めた俺が、下方から自分の剣を振り上げ、
ガキイィンッ!
と相手の剣を宙に舞わせた。
再び、ビックリした魔法剣士の、首の左側に〝ピタッ〟と刃を添えて、
「どうする? 死ぬか?」
と、詰め寄ったら、〝フーッ〟と息を吐き、
「完敗だ、好きにしろ。」
と潔く降伏したので、【絶対服従】させて、俺の部屋へと連れ込んで、躾けてやったのだ―。