第28話 トーキーへの帰還
「現魔王は“進化系”というのは?」
と、聞いたところ、
「うむ。」
「何でも〝相手の精気を吸い取るスキル〟によって進化なされたとの事じゃ。」
との回答だったので、俺は、[某・鉄血にして熱血にして冷血な怪○の王であらせられる、キ○ショット・アセロ○オリオン・ハートア○ダーブレードこと、忍○忍]を、想像してしまった。
(そういや、コイツの喋り口調って、どことなく似ているよな、忍ちゃんに…。)
(そのうち、〝ぱな○の!〟であったり、〝じゃぱな○の!〟って、言い出さねぇだろうなぁ。)
と思いつつ…、そんなキ○ショット、もとい!ゴブリン女王に、
「魔王って、ヴァンパイアなのか?」
と、質問してみたところ、
「ヴァ…??」
と困惑したので、吸血鬼の何たるかを教えてやった。
「なるほど…、生き血を啜ってのぉ…。」
「意味は解したが、魔王様は噛みついたりはせんようじゃ。何でも〝手で触れて吸う〟という、話しじゃ。」
「それって…、ドレインタッチだよな?」
「うむ。しかし、普通のドレインタッチとは一線を画すようじゃ。」
「ドレインタッチは、基本的に、HPやMPを奪うスキルじゃが、魔王様の場合は他者の経験値を吸収する、〝アルティメットドレインタッチ〟という名称らしい。」
(なんだそれは!? 〝ドレインタッチの進化版〟か??)
(経験値を吸えば吸うほどレベルアップするって事だろ?)
(…結構、チートだな。)
と、戸惑ったものの、
「でも、それって、触られさえしなければ問題なし、ってことだよな?」
と確認したら、
「ロードが敗れたのじゃぞ? 現時点でのお前様に勝算があるのかえ?」
と、痛いところを突かれてしまったので、
「ぱないなぁ。」
と返したところ、
「ぱな…? なんじゃ??」
と首を傾げられてしまった。
「いや、いい。忘れてくれ。」
と、なかったことにしつつ、
「魔王の性別は?」
と窺ってみたら、
「不明じゃが…、もし女子だとしても、“チャーム”は通用せんかもしれんぞ。」
「なんせ、“魔族の王”じゃからのぉ…、他にどんな能力を持ち合わせておるやら。」
「例えば、全てのスキルを無効化するという“アンチスキル”とか、の。」
と、回答されてしまった。
「アンチスキル…、そんなもんがあるのか?」
と更に訊ねてみたところ、
「あくまで“伝説のスキル”じゃからのぉ、そんな能力は存在しておらんやもしれんし…、何とも言えんのぉう。」
との説明だった。
聞きたい事は一通り聞き終えたので、
「取り敢えず、いろいろと疲れたから、もう寝ようぜ。」
と誘導したら、
「うむ。そうじゃな。何かと激しかったからの♡ 愛しき御方よ♡♡」
と、デレるのだった。
ひと眠りして、昼食を済ませた俺は、【伝言】にて、
『ゴブリン女王のことを“俺”だと思って、これまで通り仕えよ!』
『ただし、俺と女王が再び対立した場合は、こちらに従え!』
とゴブリンの国中に命令を下し、城の庭で休息をとっていた魔物たちを地元に引き上げさせた。
王城の外にて――。
黄色を基調とした黒と白のチェック柄のパンツに、白色のワイシャツはINしておらず、第2ボタンまでを開けており、茜色のネクタイを緩めた学生服姿で、宙に浮いている俺に、窓から顔を出すゴブリンロードが、
「絶対に、また、妾のところへ来るのじゃぞ、愛しき御方よ!」
「約束じゃからのッ!!」
と、瞳を潤ませたので、
「ああ、また、必ずな!」
と告げて、トーキー王国へと飛び立ったのだった。
途中、途中、休憩を挟みながら、懐かしの城に到着したところ、まずは、集まってきたモンスター達が跪きながら、
「お帰りなさいませ。ご主君!」
「ご無事で何よりです。主様!」
と、嬉しそうに挨拶するなか、ミノタウロスだけが、釈然としない様子だった。
そこで例の一件を他の魔物たちから知らされた俺が、おもわず笑ってしまったところ、
『笑い事ではございませんぞ、ご主君!』
『我は、ご主君の為にもと思って、追随しようとしたのですぞ!』
『それを笑い話にされるなど、心外でございます!』
と立腹したので、
「すまん、すまん。」
「今度は最後までお供させてやるから、機嫌直せよ、な。」
と、宥めたら、
『分かり申したぁッ!!』
と喜んだので、
(割とチョロいな、こいつ。)
と、ほくそ笑んだ。
城内では、王を始めとした国の要人たちと、勇者一行が、温かく迎え入れてくれたので、俺はなんだか里帰りした気分になってしまった―。