第24話 ゴブリンの王
北・東・西の軍勢の状況を【念話】で確認してみたところ、それぞれに4割の兵を失ったが、ジェネラルたちを倒したとの事だった。
「ほッ」と胸をなでおろした俺は、
(この有様じゃ、もっと沢山の犠牲者を出しかねないな。)
と判断し、LV.90未満のモンスター達を帰らせた。
その結果、各兵数が3千ずつになってしまったが、致し方ない。
ここからは慎重を期していく。
まずは中央を【絶対服従】させたが、ゴブリンロードに気取られないように、いつも通りの生活を過ごさせる。
その後、王都を目指して進軍していくのだった。
それから約2週が経ち、現地に到着したので、【伝言】で都の門を全て解放させて、城を目指す。
ここの王城は北東に位置しており、都の中心は広場になっていると聞いた。
小1時間後、その広場に差し掛かったところ、俺たち目掛けて、幅2M長さ8M程の“炎”が飛んできたが、間一髪、全員がこれを躱す。
その方向を見ると、広場の北東に在る2階建ての民家の上に人影が写った。
そいつが〝ズダンッ!〟と広場に飛び降りる。
身長172~173㎝で緑色のメスゴブリンだ。
顔はキツメ(怖そうな印象)だが、かなりの美形である。
クールビューティーといった雰囲気だ。
背中あたりまでの長さがあるドレッド風の髪と瞳に爪が真っ赤で、黒を基調とした鎧を着ている。
騎士のような感じだが、それよりも軽装なので、【剣士】であろう。
白いマントは肩当てと一体化しており、額には、小さくて赤い宝石と金の装飾で作られたサークレットを装着している。
そのゴブリンが右手に持っている中剣の刃から〝メラメラ〟と炎が発せられていた。
(十中八九そうだろうな~。)
と思いつつ、南方領主の“ゴブリーナ”に、
「あいつは?」
と、訊ねたら、
「“ゴブリンの王”にございます。」
と予想通りの回答がきた。
「やっぱりな…。」
「つーか、メスかよ!!」
「てっきりオスだと思ってたぞ!」
「あれだと“ゴブリンの王”じゃなくって“ゴブリン女王”だろうよッ!!」
と、いささか喚いたところ、
「ん? あれ??」
「 …言ってませんでしたっけ?〝ロードは女性です〟って。」
と返ってきた。
「初耳だわ…。」
と、呟いていたら、
その[女王]が、
「汝ら、よくもやってくれたのぉ~ッ。」
〝ギリギリギリィッ〟と歯軋りしながら、ゆっくりと距離を詰めてくる。
【可視化】を使ってみると、LV.148で、HPが1480の、MPは1016という事が分かった。
ヒットポイントは俺と大差なく、魔法やスキルは取得していなようだが、攻撃力と防御力に素早さはこっちより上だ。
それだけでも厄介だが、あの剣は手に負える代物では無さそうな気がする。
「妾の預かり知らぬところで都の門が開いたかと思えば、四将軍の帰還ではなく、侵入者だったとはのぉ~ッ。」
と言うので、南方領主に、
「なんで俺たちだと分かったんだ?」
「待ち伏せしていたってことは、そういうことだよなぁ?」
と、質問してみたところ、
「ロード級の魔物たちは他者の“気”を感じ取ることが出来ます。」
との説明だったので、
(そりゃあれか?)
(某〝世界中に散らばった7つの光る球を集めれば、神の龍が願いを叶えてくれる〟という、あの登場人物たちみたいな…。)
と、連想していたが、ゴブリーナの、
「主様、来ます!」
との声で我に返った。
ロードがソードを両手で握りしめ、自身の顔(右側)の高さで構えている。
「はッ!!」
と剣を突き出すと、炎が結構なスピードで飛んできた。
これを、ギリで右方に躱して、後ろを振り向きながら見送り、
(あっぶねぇーッ。)
と、冷や汗を掻く。
そんな俺の腹部から〝ズシュッ!〟と音が聞こえてきて、〝ボウッ!〟と燃えた―。