第22話 誤算
【可視化】で確認してみると、この“ゴブリンシャーマン”は、LV.121で、攻撃/回復/補助/特殊の魔法を多く取得している。
得ていない魔法は全体の3割ほどではないか?と、予測された。
老人のような見た目に、肌は色素を失いかけつつある黄緑色で、黒い髪を腰あたりまで伸ばしている。
顔の上半分は、冠している獣の頭蓋骨が邪魔でイマイチ判別できない。
俺とゴブリーナが、
「“四将軍”という名称からして、騎士や戦士に剣士などを想像していたが?」
「ジェネラルたちは、戦士・アサシン・武闘家と、ビショップから進化したシャーマンにございます。」
と会話していると、
その“ゴブリンシャーマン”が右手に持っている杖を掲げた。
すると、上空に巨大な円形の黄色い魔法人が出現する。
間違いなく[雷撃]だ。
俺は直径4Mの青い魔法人を展開し、即座に[氷]を飛ばした。
この氷は、幅4Mで長さ6Mの歪な楕円形をしており、その両端は鋭利に尖っている。
ちなみに、攻撃魔法は使用者のイメージで幾つかのパターンに変形する仕組みだ。
先に発射した氷撃が時速80kmの速さで相手を襲う。
完全に捉えている。
当たれば結構なダメージを与えられるはずだ。
が、
敵は左の掌を突き出し、直径3Mの円形で白っぽい半透明の盾を発動させた。
【特殊魔法】による[魔法の盾]だ。
この盾に直撃した[氷撃]が、
ズバアァンッ!!
と、砕け散る。
シャーマンが〝ニヤァ~ッ〟と、陰湿な笑みを浮かべたので、
(来る!)
と悟った俺は、後ろを振り返り、
「全員、逃げろぉ――――ッ!!!!」
と、怒鳴った。
しかし、大半の魔物が、〝四将軍で最も強いゴブリンシャーマン〟に、驚きすくみ上って、動けずにいる。
そこへ、
ズバババババアァァァンッ!!!!
と無数の雷が落ちた。
俺を筆頭に、レベル80以上の者たちは回避できたが、80未満のモンスターたちは、まともにくらい、その半数程が跡形もなく灰の塵と化す。
傷を負った者たちの多くも瀕死の状態だが、あちらこちらから「ヒール」と聞こえてきた。
「ふぅ――――ッ」
と、深く息を吐いた俺は、腰の剣を抜いて構えると同時に、【伝言】で、
『LV.80に満たない者たちは遠く離れよ。』
と命じる。
レベル80を超えている1万体が一斉に攻撃を開始した。
ちなみに、およそ50万のモンスターがいたのだが、俺の読みの甘さによって約20万を失っている。
素手で、矢で、剣で、槍で、斧で、鉄球で、魔法で、思い思いの一撃を繰り出す。
本来ならこれで倒せる筈なのだが…。
ゴブリンシャーマンが自身の前後左右と頭上に【マジック・シールド】を同時展開した。
その結果、全ての物理攻撃と魔法攻撃が通用しない状態になってしまったのである。
シャーマンを囲みつつも、一定の距離を置いて様子を窺う俺たちに、
「終わりか?」
と、薄ら笑いしやがった―。