第2話 勇者に操られて
訓練の成果を確かめるという名目で、俺たち約1300人の学生と、68名の教職員が、王都の南東にある森林へと送り込まれた。
少し脱線するが、俺たちの高校は学年ごとに、[特進コース・普通科・商業科・工業科・スポーツ推薦科・国際コース]があり、特進コースは1クラスずつだが、他のクラスは2クラスずつ設けられている。
国際コースには、日本人だけでなく海外からの留学生たちも通っていた。
あの日、何かしらの理由があって欠席していた者以外は、全員こちらの世界での生活を余儀なくされている。
さて、本題に戻ろう。
この森林を15分ほど歩いたところで蟻の魔物たち10匹に出くわした。
個体差があるものの大きさは1M~2Mで、上半身は人間のようなフォルムをしているが全体的に甲殻に覆われており、両手が刃物のように鋭く尖っている。
敵に気付いた皆が武器を手にして構えた。
ちなみに俺の装備は、革で作られた胸当て・小手・腰当て・すね当てといった軽装備に、腰の左側に収めていた刃渡り30㎝ぐらいの短剣だ。
更に、腰の後ろには、縦20㎝・横12.5㎝・厚さ10㎝の、革の鞄(色はブラウン)をぶら下げている。
これは、国王から全員に配布されたアイテムBOXで、どんな物質でも出し入れする事が可能だ。
詳しくは分からないが、〝某ネコ型ロボットの、四次元ナンチャラ〟みたいな仕組みらしい…、どうやら。
俺たちは、10M程ある蟻な魔物たちとの距離を縮めていった。
その時!
木々に留まっていた鳥型のモンスターたち8体が一斉に鳴き声を上げた。
「キョー、キョー、キョキョキョキョキョ―!」
と。
こいつらを見落としていた全員の足がピタッと止まる。
次の瞬間、前方にいる蟻たちの左右から様々な魔物が現れた。
これまた、それぞれ全長に差異はあるが、1.5M~2Mほどで羽が紫色の蛾が10匹、2M~3Mくらいで黒い毛並みをしている赤目の犬たちが35体、1M~1.5Mほどの蜂が20匹、同様に1M~1.5Mぐらいで紫色の毛並みをしている鼠が10体、2M~2.5Mほどで青色の目が6つもある蜘蛛が15匹、1.5Mぐらいの山羊が5体、といったところだ。
この山羊たちは2足歩行で、直径15㎝程のジュエルが先端に付属している木の杖を持っており、藍色のフード付きローブを装備していて、ローブの内側には衣服が見え隠れしていた。
黒色が2体で白色が3体の山羊たちは、明らかに魔法を使いそうだ。
いつの間にか降下して、地上3Mほどの位置でホバリングしている鳥たちは、梟か?ミミズクか?縦の長さは1.2M~1.3Mで、翼を広げた横の長さは2.5Mとぐらいだろう。
俺のスキル【可視化】でチェックしてみたところ、LV.15~25の集まりだった。
こちらの方が数的に有利とはいえ、レベルが違う。
これは全滅しかねない。
どうする?
と、緊張が走るなか、勇者が【統べる者】を発動しやがった。
これは、使用者が指定した人々を5分間だけ言いなりに出来るというスキルだ。
今のところ200人が限界だが、レベルアップしていけば、その範囲(人数)が広がっていくらしい。
LV.2以下で、へっぽこスキルしか持ち合わせていない、或いはスキルが1つも無い人たちが、この【統べる者】によって、モンスターの群れに突撃させられた―。