第199話 逆襲の・・・・。
(スライムは割と厄介みたいだからのぉ。)
(…、まずは、あの“半馬”から経験値を奪うとしよう。)
ダークロードが、馬の女王に狙いを絞り、降下しかけたときだった。
防具以外は石化している“東の覇王”の至る箇所に、
ピシッ! ピシピシピシッ!
と、罅が入り出したのは。
「なんじゃ?!」
女魔王が目を丸くする。
他の者たちも気付いて、注目していく。
亀裂が生じた部分から“黒色と紫色が入り混じった光り”が発せられた。
次の瞬間、
ボゴォオンッ!!
石はおろか鎧までをも粉砕したのである。
「う……ぐッ?」
上半身を起こした彼に、
「覇王様??」
異世界召喚組や、トーキーの面子が、首を傾げた。
「あれは…。」
上空のガルーダが息を吞む。
〝スタッ!〟と着地したダークロードが、
「お前……、どういう事だ?」
眉をひそめる。
アンデッドソーサラーは、
「おお…、おう。」
「これは、きっと……。」
感動で震えているみたいだ。
「うむ、間違いない。」
「“進化”しおったわ!!」
笑みを浮かべて述べたのは、リヴァイアサンだった。
“東の覇王”は、25㎝ほど背丈が伸びて、180㎝ぐらいになっている。
白銀の髪は、肩あたりまでの長さになっており、オールバックのように後ろに流れていた。
顔の大部分と、首の正面から股間にかけては、生身であり、ブルーがかったグレーの肌は、完全に青くなったみたいだ。
しかし、両頬から顎にかけて/首の左右から両手にかけて/両脇から足にかけて/太腿や膝に脛/首の後ろから踵にかけては、ブラックドラゴンの鱗で覆われている。
更には、1Mの“竜の尾”が見受けられた。
手足の爪は、黒くなり、いささか鋭くなっている。
翼は健在で、目と耳にも変わりはない。
眼球の白い部分はブラックに、瞳は赤で中央は爬虫類のよう細い黒で、耳の先端は尖ったままだ。
額の左右に有るブラックの角は倍になっているみたいで、20㎝くらいの長さである。
また、牙のような上下の歯(計4本)も、少しデカくなっていた。
どうやら、“覇王”は、敵の兵どもを倒したり、魔王にダメージを与えたことによって、レベルアップを果たし、進化に伴い姿が変貌したらしい。
おそらくは、先に石化されてしまったので、いささかタイミングが遅れてしまったのだろう…。
俺が、立ち上がったところ、魔王が慌てて、両手を突き出しつつ、目を閉じ、顔をそむけ、
「ばッ! ちょ……、凶暴なそれを隠さんか!!」
と言ってきた。
「あん!?」
眉間にシワを寄せつつ、局部に視線を送ってみたところ、俺のイチモツが、かなりのビッグサイズになっていたのである。
優に30㎝は超えていそうだ。
「げッ?!」
「素っ裸じゃねぇか、俺。」
「…、んん?」
「なんか、以前に比べて、いろいろと違うような??」
不思議がる俺を、
「いいから、早よう、なんとかせぇいッ!」
ダークロードが促す。
「ああ、……、いや、ちょっと待て、確認したいことがある。」
自分のステータスをチェックしてみたら、【LV.125/HP:5000/MP:4375/基本攻撃力:3750/基本防御力:3125/基本素早さ:2500】になっていた。
何もかもが大幅にUPしているうえに、進化によって新たなスキルを収得したのと、[特殊魔法]を覚えたみたいだ。
「勝てるかもしれねぇな。」
〝ニヤリ〟と口元を緩めた俺は、肩当てに付属していたマントを掴んで、腰の後ろで結ぶ。
外側が黒色の、内側は赤色で、縁が金色のヤ―ツだ。
ちなみに、[アイテムBOX]は革紐が切れて、転がっている。
「さて、続きといこうか。」
準備を整えた俺に、
「やれやれ、やっとか…。」
魔王が軽く溜息を吐いて安堵した。
「つーか、お前、“サキュパス”なんだから、これぐらいなんともねぇだろ?」
疑問と共にツッコんだところ、
「我は、“亜種”だからかもしれんが、そういうのは、あまり……。」
口を尖らせて〝ゴニョゴニョ〟したのである。
「ふぅ~ん。」
「…、まぁ、いい。」
「さっさとケリつけてやんよッ!!」
宣言した俺は、右手を高々と掲げて、遥か上空に直径4Mの魔法陣を出現させた。
そこからすぐに、手を〝ブンッ!〟と振り下ろす。
「む!?」
「なんの真似だ??」
怪訝そうなダークロードに、
「あとで分かっから、楽しみにしてろ。」
と、告げる。
「なにやら自信ありげだが…、武器を拾わんでもよいのか?」
魔王が伺ってきたので、
「ん??」
「ああ、……、ま、“アーティファクト”を用いなくても、負けねぇだろ。」
このように返したのである。
本当は、ついさっき発動させた魔法に“4000”ものMPを消費してしまい、残り僅かになっているから使いたくないのだ。
なにせ、[常闇の剣]はマジックポイントを吸収するので。
“アイテムBOX”も地面に落ちているため、MPを回復させてくれる系統のポーションを取り出そうとしても、ダークロードが阻止してくるだろう。
それらを悟られたくなかった俺は、わざと余裕を演じたのである。
あとは、“ガキンチョ魔王”の冷静さを失わせるだけだと判断した俺が、
「どっからでも掛かってこい。」
左で〝クイッ クイッ〟と手招きしたら、ダークロードが〝ブチン!!〟とキレた―。