第198話 VS.ダークロード
リッチに、
『覇王よ。』
『ダークロードは、お主よりレベルが高いサキュパスである故に、“チャーム”が効かんじゃろうから、念頭に置いておくがよい。』
そう促されて、
『ああ、分かった。』
頷いた俺は、余裕綽々な女魔王の頭上に、直径10Mの“黒い球体”を出現させたのである。
「ぬおッ?!」
球体の圧に押されたダークロードが墜ちていき、うつ伏せで地面に倒れた。
俺は、一気にケリをつけるべく、[常闇の剣]を下に向けたのである。
下降した球体が、現魔王の1Mほど上で〝ピタッ!〟と、止まった。
「うぬぬッ……、ぐぅうッ。」
苦しむダークロードに、新連合軍の多くが、
「おおッ!!」
「いける! いけるぞッ!!」
といった感じで活気だつ。
俺も勝利を確信した。
のだが…。
“黒い球体”の真下から、直径25㎝ぐらいの[ピンク色のビーム]が発せられたのである。
俺の位置からは死角になっていたので、よく見えなかったが、魔王が左手で魔法陣を構築して、“桃色の光線”を放ったようだ。
いずれにせよ、予想だにしていなかった反撃を、
「うおッ?!」
慌てて左へと躱した俺が、軽くバランスを崩した結果、球体が消滅してしまった。
〝スクッ!〟と立ち上がって、
「やってくれたではないかぁ~ッ。」
「この屈辱、ただでは済まさんゆえ、覚悟するがよいッ!!」
宣言したダークロードが、〝ビュンッ!〟と、飛んできたのである。
かなりのスピードで間合いを詰めた魔王が、左の掌で直径1Mの魔法陣を展開するなり、幅5㎝×長さ50㎝の[ピンク色のビーム]を100数くらい発射した。
「くッ!」
俺が右へと逃れたところ、
ズブシュッ!!
左太腿に“鎌”を刺してきたのである。
この箇所から、
ピキピキピキピキィ―ッ!
と、石化が始まっていく。
「!!」
焦った俺は、ダークロードの腹部(左寄り)を、
ズシュッ!
剣で突いた。
「むぅ~ッ。」
眉間にシワを寄せた魔王ではあったが、
「諦めよ!!」
勧告してくる。
「誰が……ッ!」
俺は抗おうとしたものの、顔と右腕以外が石になっていき、ほぼ、どうする事も出来ない。
「ぅおりゃッ!!」
悪あがきで、常闇の剣を右へと払い、ダークロードの腹を三割ほど切った。
「ぬぐッ!」
魔王が表情を歪めるも、次の瞬間には、
「…、終わりだ。」
「観念せぇい。」
勝ち誇ったかのように、口元を緩めたのである……。
“東の覇王”は、完全に石化してしまった。
彼が右手に握っている常闇の剣身が〝フッ〟と消える。
ダークロードが[永夢の鎌]を太腿から抜いたところ、覇王が仰向けで〝ヒュ――ッ〟と落下していき、〝ドサッ!!〟と背中を地面に叩き付けられた。
味方陣営の、あちらこちらから、〝あ――ッ!〟という悲痛な声があがる。
自分の“アイテムBOX”から取り出した[HP回復ハイポーション]を飲んで、傷を治した魔王は、
(さて…、総大将を打ち負かして兵どもの心を折るつもりだったが、どやつもこやつも〝絶対に降伏するものか〟といった目つきをしておるわ。)
(徹底抗戦となれば、“リヴァイアサン”と“ガルーダ”が厄介よな。)
(……ふむ。)
(先に、あ奴らから“経験値”を吸収して、レベルアップを図るとするか。)
(我の“アルティメット・ドレインタッチ”でのぉう。)
新連合軍…、なかでも特に、ロード達に視線を送って、冷酷な笑みを浮かべた―。