第197話 終わりの始まり
宙に浮いたまま、〝スゥ―〟と、こちらに向かってくる者がいた。
身長は145㎝くらいである。
ロングヘアーも肌も透き通るかのように白い。
おそらく“アルビノ”だろう。
瞳はピンク色だ。
頭には黒い角が二本あり、背に生えている翼は蝙蝠を彷彿とさせる。
露出度が高いブラックの衣服を含めて、“サキュパス”に違いない。
腰には[アイテムBOX]を着けていた。
ちなみに、“ド貧乳”である。
イメージとしては、“リ○ル=テン○スト”のところの[ミ○ム・ナー○ァ]と、“ルー○ウス・グレ○ラット”の世界の[キ○リカ・キ○リス]を、足して2で割ったかのような感じだ。
右手には、銀と黒が入り混じったカマを持っている。
まるで、[死神の鎌]のような。
柄にも、カマの部分にも、装飾が施されており、なかなかにカッコイイ。
首には、10㎝大でピンク色の“クリスタル”を、かけている。
きっと、あれで、石像どもを操っているのであろう。
俺とリヴァイアサンの25Mほど手前で〝ピタッ!〟と止まった幼女(?)が、
「我こそは“魔王”なり!」
「まずは、そなたらの実力を素直に認め、褒めるとしよう。」
「…、見事だ!!」
「して……、ここからが本題である!」
「そちらの代表よ、我と闘え!!」
「1対1の勝負にて、決着をつけようではないかあ―ッ!!!!」
と、告げてきたのである。
いわゆる“アニメ声”で。
それにしても、異世界の魔王などは、いつから、こういうキャラが定番になったんだろう?
ま、深くは追求しないでおこう。
左手で後頭部を〝ポリポリ〟掻いた俺は、7~8M進み出た。
「ん?」
「なんだ、お前は!?」
訝しがる[女魔王]に、
「俺は、“東の覇王”、この連合軍の総大将だ。」
名乗ったところ、
「お前が、か??」
「“水の王”ないし、“鳥の王”ではなく?」
首を傾げられてしまったのである。
「ああ、そうだ。」
頷いた俺が、【可視化】を使ってみたら、[ダークロード]のレベルは“184”だった。
ステータスを詳しく確認していこうとしたところ、見えなくなってしまったのである。
「お前、今、覗いたな?!」
軽く睨み付けてきた現魔王に、
「もしかして…、“アンチスキル”か??」
聞いてみたら、
「いんやッ!」
「“シャットダウン”だ!!」
「我だけのスキルである!」
「どうだ? 凄いだろ!?」
〝わ――ッはッはッはッはーッ!!〟と笑いだした。
「別に、それは、どぉでもいいが……、LV.184かよ…。」
なんだか“敗北のフラグ”が立ちそうで、俺の頭が痛くなっていったところ、
「我が変わってやってもよいぞ。」
リヴァイアサンが提案してきた。
更には、地から上昇したガルーダが、
「“生きる伝説”たる貴殿を煩わせるほどでもない。」
「オレに任せよ、覇王。」
と述べた。
「いや、俺達が故郷に戻るためには、この世界の者の手を借りるわけにはいかない。」
「なにせ、〝召喚された連中が、魔王を倒すか降伏させるか〟が、あっちに帰れる条件みてぇだからな。」
苦笑いしながら伝えた俺は、
「という事で……、やってやんよッ!!」
[常闇の剣]を改めて抜いたのである―。