第196話 移ろう戦局・後編
『で? “天才魔導師”よ。』
俺が呼び掛けてみたところ、
『なんじゃ?!』
『覇王よ!!』
アンデッドソーサラーが嬉しそうにしたのである。
どうも“天才”というフレーズが大好きらしい。
それはさて置き。
『アーティファクトによる効果なんだよな?』
確認する俺に、
『うむ。』
『石化は、の。』
『大昔の文献に、“永夢の鎌”という記録があった筈じゃ。』
『それによる能力に間違いなかろう。』
リッチが述べた。
『つまり……、その武器を“義眼の魔人”が手に入れたってことか??』
俺が質問してみたら、
『どうじゃろうな?』
『誰が発見したかは不明じゃが、所有しているのは“魔王”やもしれんのぉ。』
『で、石にした連中を操る“マジックアイテム”を、義眼めが作成した、といったところじゃろうて。』
と、魔霊が考察したのである。
「いずれにしろ、我が“ブレス”で、あの石像どもを吹き飛ばせば関係なかろう!」
やる気満々になった[海の王]を、
「いや、待て!!」
「乱戦になってるみてぇだから、仲間が巻き添えになる危険性が高い!」
「ここは、別の方法を取るとしよう。」
止めさせる俺だった。
「ふ…む。」
目を凝らしたリヴァイアサンが、
「お主の言どおりじゃな、“東の覇王”よ。」
納得したうえで、
「して??」
「何か良い策でもあるのか?」
と聞いてくる。
「ま、これは、魔王と直接やり合うまで隠しておきたかったが……、しょうがねぇ。」
俺は、鞘から抜いた[常闇の剣]を、“石の軍団”の中心あたりに向けた。
ズゥウ――ンッ!!
直径10Mの“黒い球体”が出現して、この真下に居る連中を、
ミシミシミシミシィ―ッ!
地面へと押していき、30秒後には、
ボッゴオオオオンッ!!!!
完全に砕いたのである。
「ほう。」
「それもアーティファクトか。」
興味深そうにする[水の王]の左斜め前で、
「ああ。」
頷いた俺は、剣を納めて、最後の[MP回復DXポーション]を飲んでいく。
ちなみに、マジックポイント用の[ポーション]と[ハイポーション]は、まだ幾つか有るので、あまり不安はない。
しかしながら、使い過ぎないようにセーブしたいところだ。
何事も無限じゃないので。
ともあれ、これが功を奏したのか? 石像たちが引き下がっていく。
更には、生身の魔物らまでもが踵を返して退却を始めた。
おそらく、【念話】で意思の疎通を図ったのだろう。
ガルーダを相手に傷だらけになっていた[オーガロード]は、部下の肩を借りている。
自分の剣を右手に握っているバードロードは、闘志を削がれたようだ。
「たいして劣勢でもねぇだろうに……、緊急事態か??」
俺が疑問を抱いたところ、
「いや…。」
「どうやら、お出ましのようじゃぞ。」
「敵の長が、な。」
海の王が告げたのであった―。