第193話 ロード達の攻防戦・其之伍
迫りくる“ベアークロー”を、狼の王が[サマーソルトキック]で蹴り上げて回避した。
バク転からの流れで着地したウルフロードを狙って、熊の女王が右手から【波動】を飛ばす。
これは掌底による[空気砲]みたいなものなので、某ゲームの“波○拳”とは全くもって異なる。
いずれにしろ、片手とは言え、6M級のベアークイーンが放つのだから、なかなかの大きさだ。
ギリで左へと躱した狼の王が、ダッシュで相手との間合いを詰めていく。
そこに、敵が右の“後ろ回し蹴り”を繰り出す。
咄嗟ではあったものの、おもいっきりジャンプして上へと逃れたウルフロードが、前転で勢いをつけながらの“アクスキック”を、熊の女王の左肩に、
ズバァンッ!!
と、くらわせた。
ビキビキィーッ!
肩当てに罅が入るほどの衝撃に、
「うッ!!」
ベアーロードが左膝を地面に着く。
〝スタッ!〟と着地した狼の王が、敵の懐に飛び込むなり、ストレートパンチ・アッパーパンチ・手刀・肘鉄・裏拳・膝蹴り・前蹴り・三日月蹴り等による20連撃の【コンボ】を発動する。
これが腹部にヒットした熊の女王はヨロめきながらも、ウルフロードの頭めがけて、右の拳を叩き付けてきた。
バックステップで避けた狼の王が、両腕を後方に〝グッ〟と反らす。
「波動双破!」
前方へと突き出した左右の手から、
ドォオワッ!!
空気砲が放たれ、
ズバッオウッ!!!!
胸元にクリーンヒットしたベアークイーンが、
「がはッ!」
血を吐きつつ、
ドォーンッ!!
うつ伏せで倒れたのである。
【波動】は、本来、一つしか出せない。
しかし、ウルフロードは、長年の鍛錬によって、二つ同時に扱えるようになっていた。
痙攣する熊の女王に、
「今、楽にしてやろう。」
狼の王が近づいていく……。
7M級でオスの[マンモスロード]は、LV.153の【戦士】である。
鎧兜は白銅で、肩当てには緑色のマントが付属していた。
武器は両刃の“バトルアックス”であり、柄の長さは4Mといったところだろう。
対するは、[鳥の王]である。
背丈が180㎝ぐらいのバードロードのレベルは201だ。
甲冑は装備しておらず、チベット仏教を彷彿とさせる赤色&黄色の袈裟を纏っていた。
左腰には“中剣”を帯びているが、ジョブは不明である。
大地に立っているガルーダが、
「ふ…む。」
「ただデカイだけで、強くはなさそうだな。」
「これならば、手加減しても勝てるであろう。」
マンモスの王を値踏みした。
「鳥ごときが舐めくさりおって!」
マンモスロードが、両手で握って掲げたバトルアックスを、
「死んで悔いろッ!!」
渾身の力を込めて、鳥の王へと振り下ろす―。