第190話 ロード達の攻防戦・其之弐
この世界のスライムは、氷漬けにして粉砕するか、炎で燃やし尽くすか、爆発で跡形もなく吹き飛ばすか、しなければ、倒せない。
例えば、武器や、風系の魔法などで、切り刻んだとしても、再び一つに戻って、活動してしまう。
何故なら、スライム達は、体内に小さな“核”を有しており、自分の意志で場所を移動させる事が出来るからだ。
頭から首へ、首から腹部へ、腹部から足裏へ、といった感じで。
つまり、対戦者は、どこに“コア”があるか分からないので、スライムの全身を一気に消滅させられる手段を取るしかない。
それを知っているか否かで対応が違ってくるのだが…、[猿の王]は、どうやら後者だったみたいだ。
先程、モンキーロードに胸を刺されて弾けた[スライム女王]ではあったが、あれは、わざとである。
〝まともにやり合っては勝てない〟と判断したスライムクイーンが、自ら体を分散させて、あたかも死んだように見せかけたのだ。
相手を油断させるために。
これが功を奏し、
「グアオォォォ――ッ!!!!」
猿の王が、溶かされていく……。
[狐の女王]は【魔法剣士】である。
銀の甲冑を装備しており、肩当てには赤色のマントが付属していた。
フォックスロードのレベルは“138”なので、【伝導】を収得している。
背丈が4Mである狐の女王は、柄の長さ50㎝×刃渡り2Mの[ロングソード]から、炎・水・氷・風・雷などの魔法を、次々に発射している。
ちなみに、左利きのようだ。
【騎士】でありLV.125の[馬の女王]は、左手に持った盾で守っていた。
種類は[カイトシールド]である。
右手には“バンプレート状”の[ランス]を握っていた。
なにはともあれ、半ペガサスのロードは、防ぐので精一杯みたいだ。
攻撃しながら間合いを詰めたフォックスクイーンが、
シュババババババババババンッ!!
と、10連発の【乱れ打ち】を放つ。
ガシィンッ!
盾で受け止めきれず、上半身を反らした馬の女王が、
ズザザ――ッ!!
2~3Mほど後方に下がった。
狐の女王が、すかさず、最大幅40㎝×長さ4Mの“三日月状の風”をソードから飛ばす。
半天馬たるクイーンは、咄嗟に、宙へと逃れた。
上空10Mぐらいの位置で、
「ふぅー。」
馬の女王が軽く息を吐く。
「翼は有している連中は、これだから厄介だ。」
「でも…、撃ち落とせば関係ない!」
フォックスロードが、長剣の刃に“雷”を纏わせていく。
空中にて、
(これは一日一回しか発動できないので、極力、最後の方まで使いたくなかったのですが……、仕方ありませんわね。)
(出し惜しみせず、全力でいくとしましょう。)
不利な状況を覆すべく、“奥の手”を用いる事に決めた[ホースロード]であった―。