第186話 魔王軍・其之参
味方の多くがレベルに関係なく“魅了”されてしまったなか、俺の近くで宙に浮いている[アンデッドソーサラー]が、
「効かんわーッ!!」
魔法の杖を〝ブンッ!〟と振り下ろし、上空から千本もの“雷”を落とした。
ズバッオォウッ!!!!
ビリビリビリビリィ――ッ!!
命中したサキュバス&インキュバスが地面に墜ちていく。
リッチ以外には、トーキー・スライム・兎の国の面子に、エルフの国主や冒険者らは、平気だったらしく、敵軍に攻撃を仕掛けている。
「ディスオーダー・リカバリー!!」
ハーフエルフである[国主補佐官]によって、全員の【魅了】が解かれたようだ。
魔法を使える者たちや、魔銃を所有している連中が、炎/水/氷/風/雷/爆発を発動していく。
主に、サキュバスとインキュバスを狙って。
他のメンバーは、地上で戦闘になっている。
【弓士】と【武術士】は[アーティファクト]を扱っているようだ。
俺は、次から次へと魔法を放ちながら、
『なぁ、なんで、“チャーム”に掛かった奴らと、そうでない者たちが、いたんだ??』
との疑問を投げかけてみたところ、
『ふむ。』
『まず、お前さんは“旧魔王”と同化しておるが…、厄災のキマイラには“サキュバス”も含まれておるからな、魅了されることは、まず、ない。』
『あとは、お前さんの“絶対服従”や“チャーム”が施されている者には、通用せんかったのじゃろう。』
『なにせ、“ディスオーダー・リカバリー”をもってしても、解放できんスキルなのじゃから。』
『そこら辺は、“旧魔王”の力が絶大なのかもしれんのぉ。』
『儂に至っては死人じゃからな、とっくに色恋なぞとは無縁になっておるのじゃ、“東の覇王”よ!』
魔霊が説明した。
『成程、な……。』
『ん? でも、待てよ。』
『俺に支配されていない“メタルスライム”も平然としてたみたいだが??』
『それと…、エルフ族の補佐官は?』
軽く首を傾げる俺に、
『私どもは交尾による生殖でなく、分裂で子孫繫栄していきますので、性欲などございません。』
『発情というものが皆無であれば、魅了されないのは必然かと……、覇王様。』
[スライムの女王]が述べて、
『私は、恥ずかしながら“チャーム”に掛かってしまいましたが…、そちらの魔導士殿の“雷撃”によって、解かれたようです。』
『おそらく、私を“魅了”したサキュバスが気絶したのでしょう。』
[国主補佐官]が続いたのである。
『あー、そういう事か。』
納得する俺であった。
“クレリック”たちと“ビショップ”らによる【加護】もあって、眼前の敵を7割ほど倒していったところで、新たに八千万ぐらいが進軍して来た。
【可視化】によれば、1.5M級の猿/2M級の狐/2.5M級のウェンディゴ/3M級の熊/3.5M級のマンモス、これらの[ロード]と、それに準ずる幹部達までもが、動いたようだ。
オーガ・ギガンテス・サキュバス&インキュバスも幾らか見受けられるが、これらの親玉などは未だ待機している。
いずれにせよ、
「どうやら、小手調べが終わって、ここからが本番ってとこみてぇだな。」
人知れず呟く俺だった―。