第184話 魔王軍・其之壱
翌朝になった。
二日酔いである。
だが、時間は待ってくれないのだ。
AM8:30頃に、ウルフロードからの【念話】が入った。
なんでも、[狼の国]の偵察隊によれば、魔王軍の行進が早まっているのだそうだ。
おそらく、今日のPM14:00には、[屍の国]の王都に到着するらしい。
俺は、この事を、各代表に【伝言】で知らせたのであった。
小一時間後……。
それぞれの国から、主だったメンバーが、[屍の都]付近に集結した。
今回は、LV.50以上に絞っている。
とは言え、トーキーの軍勢には、いつもの面子が含まれているので、レベルが50未満の者らも参加していた。
まぁ、なかには、[アーティファクト]を扱える連中がいるので、貴重な戦力である。
森人族の部隊には、エルフや獣人らと一緒に冒険していた人間の男女二人組も見受けられた。
どちらもLV.45といったところだが、本人たちの、たっての希望ということで、[森人族の長]が伴わせたらしい。
ちなみに、[兎の王]の姿はなかった。
本人(本兎?)は、来ようとしたものの、周囲が猛反対したらしい。
なので…、現在の四将軍が訪れていた。
代理として。
このなかには、元・南方領主の“ヴォルパーティンガー”と、元・西方領主の“ワーラビット”がいる。
ジェネラル達の、NO.1はヴォルパーティンガーで、NO.2はワーラビットに、なっていた。
他にも、ドワーフんとこの[補佐官]が“戦闘タイプ”ではないため、不参加である。
そんなこんなで、総勢一千万ぐらいの連合軍が新たに結成されたのだ。
昼食を摂っている際に、トーキーの人間やモンスターと異世界召喚組が広めたらしく、俺は、誰からも、〝東の覇王〟〝覇王さん〟〝覇王殿〟〝覇王様〟と呼ばれるようになった……。
俺らは、王都の北側に布陣している。
先頭は“トーキー軍”が受け持つ事にした。
午後の二時を過ぎ、2億4千万もの魔王軍が見えてきた。
俺たちは、遂に、相まみえたのである……。
1㎞ほど離れた位置で、互いに様子を窺っていた。
背からドラゴンの翼を出して、宙に浮いた俺は、
『むこうは、こっちの24倍もの兵数だが、関係ない!』
『臆するな!!』
『実力を発揮しろ!!!』
『勝利をもぎ取れぇーいッ!!!!』
新連合軍を鼓舞して、突撃していったのである。
間合いを詰めていく俺達に、魔王軍の三千万くらいが、ダッシュで前進してきた。
『あの、二本角で体毛が白い集団は……、イエティか?』
俺の疑問に、
『“ウェンディゴ”じゃな。』
アンデッドソーサラーが答えたのである。
およそ三千万の顔ぶれは、1.5M級の猿/2M級の狐/2.5M級のウェンディゴ/3M級の熊/3.5M級のマンモス、といった感じだ。
[北の大陸]は、一年中、冬みたいなものなので、冷気属性や、寒さに強い、魔物が多いらしい。
どれも二足歩行であり、鉄の甲冑やローブに、剣/槍/ダガー/バトルアックス/モーニングスター/弓/魔法の杖などを、装備している。
こちらに迫っていた奴らに、ミノタウロス元帥が、
ウオオオオ――ッ!!
【咆哮】を発した。
それによって、駆けていた相手の8割ほどが、震えあがったり、転倒していく。
効果が無かった魔物たちは、走るのを止めようとしない。
こっちの連合軍から誰よりも速く抜け出した“銀色の人型”が、ソイツラに襲い掛かる。
そう。
前スライムロードの“メタル”だ。
現在は[上将軍]である。
「後れを取るな!」
「続けぇ―ッ!!」
うちの大将軍の号令に、皆が勢いづいた―。