第180話 広がる輪
連合軍が、
「船?」
「まさか?!」
「船が空を飛ぶものか!」
「いや…、間違いなさそうだぞ!!」
各々に騒ぎ出した。
そう。
近づいて来ていたのは、“飛行艇”である。
俺達から100Mほど離れた南側に着陸した船に、
「おお―ッ!」
「なんじゃ、あれは―ッ!!」
アンデッドソーサラーのテンションが爆上がりになった。
俺を先頭に、全員が、飛行艇へと向かう。
あちらから降りてきた連中に気付いた俺は、いささか驚いたのである。
トーキーの賢者は別として、エルフの国主と補佐官に冒険者だったメンバーや、ドワーフの国主と部下に、スライムの女王と家来や、兎の王子と側近ら、といった面子だったからだ。
「お前たち……、なんで、ここに??」
訊ねる俺に、
「新たな未来を見ました。」
[森人族の長]が説明していく。
「現在、魔王軍が南下しており、三日後に激突します。」
「皆さんは奮闘していらっしゃいましたが、残念ながら全滅しておりました。」
「我々エルフは、ドワーフ・スライム・兎の国々に使者を送り、先日、トーキー王国に集まったのです。」
「未来を変えるために。」
彼女が一通り喋ったところで、
「つまり?」
俺は質問してみた。
これに、賢者が、
「会議の結果、主だった者たちで、一度、“屍の国”に訪れようとの話しになったのです。」
と、答えたのである。
「んん~?」
意味を理解できないでいたら、
「それぞれに、“瞬間転移”を収得している魔術士を伴っておるからな。」
「魔王の動きに合わせて、各国から、待機中の軍勢を連れて来られるというわけだ、魔人殿よ!」
[小人族の長]が、そのように述べたのだ。
「なにせ、あちらの兵数は、“4臆”なので。」
エルフの国主による補足に、
「よ…。」
俺達は絶句した。
「ふむ。」
「それほどの数を動員しているとなると、前々から準備しておったのであろう。」
「狙いは、我が国やもしれん。」
人狼たるロードの表情が険しくなる。
重たい空気が流れたところ、
「あの船は、一体全体、なんなのじゃあ―ッ?!」
「他にも、魔法を発射していた武器は、どういう代物じゃ!?」
我慢しきれなくなったリッチが、場の沈黙を破った…。
俺たちが地球から召喚されたことや、こちらでの出来事を、教えたら、
「なんと……、そっちの娘っ子が現代の勇者で、お前さんの方は“旧魔王”と同化しているのか…。」
「うぅ~む。」
と唸った。
魔人の女王が、
「それで??」
「魔王軍への対応策として、何か具体的な案はあるのですか?」
もともとの話題に戻し、
「いえ。」
「私の予知夢になかった事を行っていけば、未来が少しでも変わっていきますので…、これに賭けるしかありません。」
エルフの国主が告げたのである―。