第177話 過去と現在と・序
俺たちは、地面に正座させたリッチを取り囲んでいる。
「なんで、お前は消滅しねぇんだ??」
俺の疑問に、
「うむ。」
「そういう“マジックアイテム”を完成させたからのッ!」
魔霊がドヤッてきた。
「身に着けているアクセサリーの、どれかね?」
[魔人の女王]が考察する。
「ほぉう。」
「勘づくとは…、流石じゃのぉ。」
「左の手首に嵌めておる“ブレスレット”が、そうじゃ。」
感心したアンデッドソーサラーが答えた。
コイツの話しによれば、その“金のブレスレット”によって、光を浴びても平気になっているのだそうだ。
他にも、左中指の“緑の宝石の指輪”は空中浮遊を可能にし、右中指の“青い宝石の指輪”は魔法陣を構築する手間を省く、といった効果があるらしい。
「ネックレスは??」
俺が聞いてみたら、
「アンデッドどもを操る“魔道具”じゃよ。」
「なにせ、連中は知能が低すぎて統率が取れんからのぉー。」
「ロードだけは自分の意志で動いておったが、それ以外は…。」
リッチが首を横に振ったのである。
「あの“スカルドラゴン”や、“暗黒騎士”は、どういった存在だったのだ?」
[狼の王]が訊ねたところ、
「ふむ……。」
「“アンデッドロード”は、およそ千年前に暴走したキマイラこと“旧魔王”を止めるべく立ち向かったドラゴンの一体じゃ。」
「三体ほどで戦いを挑んでおったが、全て返り討ちにあっておうた。」
「そのうちの“ホワイトドラゴン”が、やがて“屍の王”となり、この国を支配していったんじゃ。」
「“ダークナイト”は…、あの時代に“チキュウ”とかいう、こことは異なる惑星から来た者たちの一人での……、旧魔王との戦闘で命を落とした“騎士”じゃよ。」
「あの男は、いろいろと恨みが深かったのじゃろう、死後に怨霊となってしもうた…。」
このように、魔霊が語った。
「まるで見ていたかのような口調ですね。」
[馬の女王]の指摘に、
「目撃しておって当然じゃ。」
「儂は、キマイラの開発に携わったり、異世界人を転移させる“召喚魔法”を編み出した張本人じゃからのう。」
アンデッドソーサラーが述べ、一同が驚く。
一年の生徒会書記が、
「つまり…、あなたは、“千年前の大帝国”の宮廷魔術師という事ですか??」
確認したら、
「うむ!」
「実際には、“天才魔導士”と称えられておったがのッ!!」
リッチが誇らしげに〝カラカラ〟と笑ったのである。
「なぁ。」
「暗黒騎士が霊どもを吸収していたのは、なんだ?」
「そういうスキルか??」
俺が新たに質問してみたところ、
「ああ、あれは……、儂が開発した“死霊術の一種”じゃよ。」
「いろんな幽霊に試してみたのじゃが、あの騎士にしか施せなんだ。」
「霊を自身に取り込むことによって、〝MPを増大させる〟という技じゃ。」
「おそらく、亡くなってもなお強い精神を残しておらんと扱えんのじゃろう…。」
そう説明したのであった―。