第176話 生者と死者の攻防戦・後編
「させるかッ!!」
“常闇”の、剣部分を、瞬時に硬化した俺は、右から左へと払い、[アンデッドロード]の右脛を、
ガシュッ!!
と、斬ったのである。
真っ二つに切断とまではいかなかったが、半分くらいは破損できたようだ。
おそらく痛みは感じていないであろうものの、これに気付いた[屍の王]は、標的を俺に変え、顔を向けてきた。
口から直径5Mぐらいの【光線】が、
ドォオオオウッ!!!!
と発射される。
俺は、間一髪で、上に飛んで避難した。
ズッドオ――――ンッ!!!!
ビームが地面に直撃すると共に、数千のアンデッドが粉微塵になったのである。
その破壊力は、かなりのものだ。
某・風が吹いている谷で孵化した“巨大な神の兵士”が、これまたデカいダンゴムシみたいな生物たちを爆破したみたいな。
あんなイメージだ。
飛び火した周辺の屍どもが“白い炎”に焼かれている。
俺は空中で見下ろしながら、
「あっぶねぇ―。」
目を丸くした。
そんな俺を、[スカルドラゴン]が改めて“ロックオン”したようだ。
「おとなしくしてろッ!」
俺は、[常闇の剣]から直径10Mの“黒い球体”を出現させる。
この重力に押されていく[骨の竜]が耐えようとするも、〝ズドォンッ!!〟と腹ばいになった。
宙に浮いている[アンデッドソーサラー]が、炎/水/氷/風/地激/爆発といった魔法を、連合軍に放っている。
こちらの軍勢も、様々な魔法や魔銃に、矢などで応戦していた。
それと同時に“ヒーラー系”が味方に【治癒魔法】を施す。
更には、ハーピーであったり、翼や、羽を、有している者たちが、飛翔していく。
このメンバーのなかには[半ペガサスのロード]も見受けられる。
[リッチ]との空中戦が展開していくなか、地上では接近戦が繰り広げられていた。
アンデッドロードが〝ミシミシミシミシィッ!!〟と軋んでいる。
「このまま潰れやがれッ!!」
常闇の重力から逃れられず、
「グガオオオオ――ッ!!!!」
断末魔の叫びをあげる[屍の王]の背骨が、
ボキィインッ!!
と、折れた。
この光景が魔霊の視界に入る。
「いかん!」
「ロードの機能が停止してしまうと、この国は…!!」
焦り出したアンデッドソーサラーが、自身の背後に気配を感じて、〝ハッ!〟と振り向く。
そこには、巨大化した[魔人の女王]の姿があった。
「!」
「魔人族のロードか!!」
急ぎ魔法を発動しようとするリッチを、“ビッグクイーン”が両手で〝ガシッ!〟と捕らえたのである。
スカルドラゴンの瞳から色が失われていった。
これに呼応するかのように、天空の“暗雲”が〝スゥ―ッ〟と無くなっていき、太陽の光が降り注いだ。
陽光を浴びて、スケルトンが崩れ、ゾンビが横倒れになり、霊たちが消滅したのである。
もし、[常闇の剣]を入手できていなかったなら勝てなかっただろうと、人知れず安堵する俺だった―。