第175話 生者と死者の攻防戦・前編
「やべぇッ!!」
慌てる俺の眼前に、縦4M×横2.5M×厚さ5㎝の【マジック・シールド】が出現した。
左隣に並んだ【クレリックランサー】によるものだ。
それに、【光線】が当たり、互いに粉砕した。
しかし、ビームの方が勝っていたようで、俺と、周囲の者たちが、後方に吹き飛ばされてしまう。
これによって、“黒い球体”が消えてしまったのである。
敵も味方も立ち上がっていくなか、[リッチの魔術師]が先んじて杖を掲げた。
その“魔法の杖”を、〝ブンッ!〟と振り下ろすなり、上空から無数の雷が落ちてきて、こちらの軍勢の四割に直撃したのである。
片膝を地に着いた俺は、全身が痺れるなかで、[常闇の剣]を手から離す。
柄を握り続けているとMPを吸収されていくので。
(アイツ…、魔法陣を構築せずに発動したよな?)
(それだけ魔術に長けているって事か??)
俺が考察していたところ、[スカルドラゴン]が、さっきよりも大きく口を開いた。
動けない状況で、あれを、くらうのは、非常にまずい。
[リヴァイアサン]の時もそうだったが、おそらく先程のコイツも同じで、フルパワーではなかったのだろう。
お陰で、誰も命を落とさずに済んだのだが、100%で発射されてしまったら、俺たちは死にかねない。
なんとかしたいところだ。
とは言え、雷撃の所為で体の自由が利かないので、どうすることも出来ないでいる。
焦る俺達の左斜め後ろから、黒色と紫色が入り混じった直径2Mの球体が飛んでいき、[アンデッドロード]の顔を〝ボォウッ!!〟と燃やした。
どうやら、[馬の国]の左近衛大将である“バイコーン”が、口から放ったらしい。
窮地を脱して〝ホッ〟としたところ、
「おのれッ!」
「邪魔しおって!!」
魔霊が、杖を突き出し、幅1.5Mの赤い火炎を発したのである。
ヒットしてしまったバイコーンが、
「グオオォォ――ッ!!」
と呻いたものの、絶命せずに済んだようだ。
他の連中よりも、いち早く動けるようになった俺は、“アイテムBOX”から貴重な[MP回復DXポーション]を摂取した。
“常闇”の柄を掴み、背中から翼を出して、リッチめがけて飛んでいく。
このまま、額を刺そうとしたら、
「むッ!」
気付いた相手が、〝シュンッ!!〟と消えたのである。
(“瞬間転移”か?!)
俺が周囲を見回していたところ、
「こっちじゃよ。」
と、声を掛けてきたのだ。
振り返ってみると、仲間の頭上10Mあたりに移動していやがった。
魔術師が広げた両手を、真下へと勢いよく振るう。
それに伴い、最大幅15㎝×長さ1Mの“歪なクリスタル形の氷”が、数万発も放たれたのである。
犠牲になった者らが、
「ぐあッ!!」
「うおッ!!」
などと痛がっていた。
「野郎ッ!!」
魔霊に“黒い球体”を、お見舞いしようとしたら、[屍の王]が、開口したのである。
“ビーム”を再び発射すべく―。