第173話 屍の王
改めて北上すること四日、俺達は、[屍の国]の王都付近まで来ていた。
あれ以来、鍛錬を積んでいたので、一年生書記は[大地の槍]を、ほぼ完ぺきに扱えるようになっている。
ああ見えて、[特進コース]の優等生だからだろう、コツを掴むのが早かった。
俺も負けじと[常闇の剣]を使いこなせるようになったのだ。
予め、“黒霧状の剣”が発動している時には、1秒につきMPが1ポイント減っていくのは知らされていたが、新たに分かった事がある。
例の“球体”に関してであり、それは、直径1㎝につき1MPが消費されるという内容だった。
直径10㎝であれば10ポイントのMP、直径20㎝であれば20ポイントのMPが必要になる。
現在の俺のMPは“1230”なのだが…、直径1000㎝(10M)の[黒い球体]を出現させた場合、〝-1000〟で、“220”になるのだ。
更に、球体を発動したまま、1秒ごとに1ポイントのMPが吸収されていく。
220、119、118、117、……、といった具合に。
先日、大きめの岩で試してみたところ、1000㎝の“黒い球体”で、30秒あれば、粉砕することが出来た。
トータルで1030のMPを失ってしまったが。
ま、手応えとしては充分だ。
しかし、これ以外に対しては未だ使っていないので、俺よりレベルが上の奴らにどこまで通用するのかは不明である。
[MP回復ポーション]を持っているとはいえ、勝負所を見極める必要があるだろう…。
王都の南門の前には、敵の軍勢が布陣していた。
数は、およそ2300万といったところだ。
この軍に、一際デカい物体が確認できる。
それは、全てが骨の竜だった。
全長は悠に100Mを超えている。
俺の後方に控えている三年生の【ウィッチ】が、
「オオ~、“スカルドラゴン”デスネェー。」
との見解を示す。
続いて、
「やはり、“可視化”でステータスを探るのは不可能みたいです。」
二年生の【アサシン】が述べた。
『あれは……、間違いなく、この国の王、“アンデッドロード”でしょう。』
【念話】で全員に伝えたのは、[馬の女王]だ。
[屍の王]の瞳は、紫色に怪しく光っている。
スカルドラゴンが、どれぐらい強いのか定かではない事もあって、誰もが緊張に包まれていく。
未知なるアンデッドロードの右側から、何者かが〝スゥー〟と宙に浮いてくる。
背丈は170㎝くらいで、黒のローブに、金の杖と、アクセサリーを、装備しているようだ。
ローブも、魔法の杖も、身に着けている宝石類も、豪華な印象がする。
ただ、ソイツは、人間でもなければ、獣人・半獣・ドワーフ・エルフ・ハーフエルフなどでもない。
また、俺の【ズーム】によると、[義眼の魔人]でもなさそうだった―。