第170話 難攻なれど
(面倒な“アーティファクト”だな。)
渋い顔つきになる俺に対して、相手が[常闇の剣]を向けてきた。
その所為で、俺の頭上に、あの“黒い球体”が出現したのである。
さっきよりは規模の小さな直径1M程だったが、コイツの重力操作から逃れるべく、飛び去ろうとした俺が、抵抗むなしく下へと押されていく。
視線の先には、スケルトンどもが待ち構えている。
そいつらの数千体を、
ズドォオオオンッ!!!!
と爆破したのは、弓士が[爆裂の弭槍]で射った“矢”によるものだ。
[暗黒騎士]も、くらったらしく、球体が消えて、俺は自由になったのである。
だが、仰向けで倒れていた“ダークナイト”が、〝ムクリ〟と起きた。
奴が装着している[黄泉の甲冑]もまた“アーティファクト”のため、無傷なのであろう。
立ち上がった騎士が、[ドラ○ン○ール]のキャラ達が気を溜めるようなポーズになったところ、100前後の死霊が吸収されたのである。
「なんだ、ありゃ??」
状況を理解できず、俺が首を傾げたら、
『おそらくですが…、霊を養分にしているのでしょう。』
と、[魔人の女王]が【念話】で見解を示した。
『そういう能力が有るという事か?』
『あの甲冑には……。』
疑問を呈した俺に、
『いえ、そのような伝承はございませんので、敵のスキルかもしれません。』
[馬の女王]が答えたのである。
(変わったスキルだな。)
俺が不思議がっていたところ、[暗黒騎士]が味方の軍勢の方に剣先を突き出した。
これによって、再び、直径10Mもの“黒い球体”が現れ、トーキー部隊を中心に連合軍が苦しめられる。
「てめぇッ!!」
俺は、左の掌で直径2Mの魔法陣を構築した。
その魔法陣と最大幅が同じで、長さは4Mの、“歪なクリスタル形の氷”を発射する。
ズドンッ!!
腹部に直撃した“ダークナイト”が、後方へと弾かれ、球体が消えた。
またしても平然と立ってくる騎士に、
(マジかよ…。)
俺は唖然とする。
[馬の女王]が、
『勝つためには、“黄泉の甲冑”を纏っている者を直に攻撃するしかないでしょうね。』
『鎧や兜を無理矢理に剥がしてでも。』
と、述べ、
『しかし、“常闇の剣”の所為で、あ奴には迂闊に近づけぬ。』
[狼の王]が忌々しそうにした。
〝打つ手なしか?!〟と誰もが頭を悩ますなか、
『私に、お任せを!』
【クレリックランサー】が、暗黒騎士の足元に魔法陣を展開して、白銀かつ半透明で幅のある鎖を4つ出現させたのでる。
これらがダークナイトの両腕&両脚に一本ずつ巻き付いて、〝ガシャンッ!〟と拘束したのだ。
『主様! 今のうちに!!』
一年生書記に促されて、
『おう!』
『でかした!!』
と返答し、アイテムBOXに[大地の槍]を収納した俺は、“黒ずくめの騎士”めがけて、下降していった―。