第168話 暗黒騎士
一千万のアンデッド軍を全滅させて、暫く北上した俺達は、昼休憩に入った。
トーキーの面子は、[MP回復ポーション]で、消費したマジックポイントを既に補充し終えている。
食事を摂った後に、狼の国が持ってきている軍議用のテント(ゲル)に各代表が集まった。
振る舞われた珈琲や紅茶を、それぞれに味わいながら、この先の事を話し合ったのである。
とは言え、〝王都を目指して進みつつ、【咆哮】を収得している者は、どんどん使っていこう〟といったザックリした内容だったが…。
〝即席の連合軍なので、些細なことであったとしてもコミュニケーションを図っていかなければ、ちょっとした綻びが原因で総崩れになりかねない〟という、[魔人の女王]の考えに、指揮官たちが賛同しての会談のため、議題はなんでも良い。
集まること自体が重要なのだ。
ちなみに、【咆哮】は、俺と、ミノタウロス元帥や、人狼のロードに、その配下である中将軍の“熊の獣人”が、得ている。
ミーティングが済み、俺らは改めて北へと進んだ…。
四日が経った。
途中で、南方領土の、中心都市や、砦に、立ち寄ってみたが、屍どもは一体も居なかったのである。
俺らは、今、中央領土との領境に訪れていた。
眼前には、およそ1300万のアンデッド軍が布陣している。
どうやら、お待ちかねだったようだ。
これまでのように、半数はスケルトンで、三割はゾンビの、二割は霊である。
なかには“キマイラ”もいるようだ。
「毎回毎回、大歓迎してくれる連中だな。」
俺が、ある意味、感心していたところ、
ウオオオオオオオオ――――ッ!!!!
離れた位置で“熊の獣人”が咆えた。
それによって、スケルトン以外は動きを停止したのである。
いや、もう一体、平然としている奴がいた。
こいつは、“OVE○ LOA○”の[漆○の英雄モ○ン]みたいな甲冑を纏っているが、全体的に真っ黒であり、装飾が施されている。
肩当てに付属しているマントも黒い。
RPG“F○シリーズ”の[暗黒騎士]のような印象も受ける。
ともあれ、敵軍の中央かつ最前に居るソイツが、これまた黒い柄を右手で掴み、黒い鞘から中剣を抜く。
剣からは、妖気みたいな感じで、“黒い霧”が発せられているが、やや遠目なので詳細はイマイチよく分からない。
俺が【ズーム】を用いて確認しようとしたら、ソイツが剣先を斜め上に突き出した。
次の瞬間、俺たちの頭上に、突然、直径10Mはありそうな“黒い球体”が、
ヴゥ――――ンッ!!
と、現れた。
これによって、うつ伏せで倒れた先頭集団が〝ギシッ! ギシッ!〟と押し潰されていく。
俺も巻き添えになってしまい、
「がはッ!!」
口から血を吐いて、苦痛に顔を歪めるのだった―。